▼決定的に違うこと


学校に辿り着いたのはいいが、行き交う人々皆揃ってジロジロジロジロ。 俺ほんと何かしたっけ?
実は覚えてないだけの何かがあるような…ないような?
だからといってこうも視線にさらされるものだろうか。 初体験なんだけど。
しかも視線はあまり良いものでない気がする。


興味 驚き 嫌悪 恐怖


言葉で表せそうなものはこんな感じか。 居心地が悪い。
そそくさと生徒手帳で見たクラスに向かう。 学校の位置が同じだったし、とかつての記憶を頼りに進んで来たが、間違ってないだろうか?



──────



校内の構造も同じようで、進んできた方向も間違っていなかった。 クラスに着くまでの教室なんかをしっかり確認したかったが、思っていた以上に視線が刺さった。 プレゼン以外じゃ人前に立つなんてこともしなかったから気になって気になって。
正直、確認どころじゃなかったわ、うん。
その時点で気づいていればよかった。 よかったのだが、全くもって気づけなかった。



そう、クラス内からの視線もあることに。
そりゃギリギリの時間だもんな? 人ほぼ揃ってるところに扉が開けば視線も集まるよ。 ちょういたいです。 めっちゃささる。 へるぷみー。 帰りたい。


「………」


そっと目だけを使ってクラスを確認する。 が、目が合いそうになると尽く顔を背けられた。 え? 俺嫌われてんの? 泣きそうなんだけど。
席までは覚えていない。 だから誰かしら話すくらいの相手はいるだろう、そいつに聞けばいいや、なんて考えていたのだが。
楽観的に考えすぎたのか。


時間ギリギリ。 席はわからない。 嫌われてそう。
これは、詰みなのでは…? 急いで来た努力虚しく、無駄に体力使っただけになるのか…。



「マージで名字いんじゃん! 朝からとかメズラシー!」


完全に諦めモードに入っていた俺の肩に、誰かの腕が回る。 距離が近いせいで声がめちゃくちゃうるさい。
つい睨むように、声の主に視線をやる。


「っ、そ、んなに睨むなよ…。 悪かったって」


すごい勢いで怯まれた。 そんなに目付き悪かったっけか。 ああでも確かにつり目ぎみだったなあ。
ぼんやり自分の顔を思い出していると、そいつが背中を押してきた。 されるがままに教室を突っ切る。 窓側の前から2番目。 その席まで来ると、そいつは肩をポンっと叩いて自分の席だろう場所に去っていった。 ならここが俺の席か。


思わぬ展開だったけれども、席がわかったなら座っとくのが吉だ。 なんせ時間も時間だし。
そしてまた、ぼんやりと外を眺める。 頭ん中整理したい。 起きてから色々ありすぎた。
頬杖をついて、知ったこと、わからないこと、考えを巡らせる。



ただひとつ、決定的に違うこと。 それは、ここは俺の知っているところじゃない。 席につれてきてくれたやつも、クラスのやつも、見覚えがないのだ。 俺自身の見た目が全く違うように。

back next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -