平穏の裏側は
『ん…』
「△△…!よかった、気が付いたんですね…」
目が覚めたはいいがどうして寝てたんだったか
ぼんやりした思考のまま寝る前のことを思い出す
ああそうか、俺は寝たんじゃなくて倒れたんだった
「いきなり倒れたから心配したんですよ?」
『悪い…』
眠気やら非現実的なことやらで色々ピークに達したようだ
まぁあの色香に当てられたんじゃ…とそこまで思い出した先ほどまでの光景を振り払う
骸にどうかしたのかと声をかけられ苦笑を返す
『どれくらい気を失ってたんだ?』
「30分くらいですよ。△△、また徹夜続きで寝てなかったそうですね」
『…誰から聞いた』
「ボンゴレから」
骸から出た人物に頭を抱える
あれだけ骸には言うなと口止めしたというのに
「全く何度言っても貴方は無茶をしますね…」
『面目ない、反省してる』
俺が無茶をすれば腐れ縁のやつには大抵怒られる、骸は特に
時には笑顔で嫌味を、時には不機嫌オーラ満載で3時間正座をさせられ無言の耐久
他のやつらが真っすぐにぶつかってくるからこそ、骸の怒り方は肉体的にも精神的にも堪えるものがある
「…まぁ今回は僕も無理をさせてしまいましたし、怒ったりはしませんよ。次はありませんが」
『…ああ』
無意識に強張っていた力が抜ける
そのあからさまな安心具合に骸が呆れた様な顔をしているのは気のせいにしておこう
「先ほどの続きですが…他に聞きたいこととかありますか?」
『聞きたいことって言ってもな…極上品だってことは確定だろ?』
「そうですね。大量に摂取したわけでもないのに身体が以前よりも軽いですし、今までの狙われ具合からしても確定でしょう」
渇きはもうすっかり良くなったようで少し安心する
ふと指を見れば傷がない
可笑しいなと首を傾げていると、骸が気づいたようにああ、と答えてくれた
「僕ら吸血鬼の唾液には治癒の力があるので吸いながら治るんです。
身体のどの場所にしても、あからさまな牙の跡や傷が残ってれば面倒なことになりますし」
『魔女狩りやボンゴレ狩りならぬ吸血鬼がりってか』
「そんな感じです。大昔にはあったようですけど」
そんなに大昔から吸血鬼っていたのかと感心していたが、一つ引っかかることがあった
骸の言った‘今までの狙われ具合’という一言だ
俺は骸がカミングアウトするまでは吸血鬼なんて非現実的なこととは無縁だった
なのにいつどこで狙われていたというのか
『話は戻るけど…俺って狙われてたのか?』
「ええ、かなりの頻度で」
『じゃあどっかですれ違ったやつが吸血鬼だったり…』
「しますね。そのせいで僕が今までどれっだけ苦労したことか…」
俺の知らないところで骸にはだいぶ迷惑をかけてしまっていたようで申し訳なくなる
そんな俺の心情を見抜いたのか、謝ったり迷惑かけたとかは思わないようにと先手を打たれた
『いやでも、苦労かけたんだろ?』
「そうですけど知らなかった貴方に非はないでしょう」
『……ちなみにどんなことしてたんだ?』
「どんな、ですか…そうですねぇ…△△が喰われないように他の吸血鬼を見かければなるべく貴方から離れないようにしたり…
ああ、時には力でねじ伏せることもありましたね」
かけていた迷惑は自分で思ってた以上だった
さらに詳しく聞けば牢獄にいた間も契約した人物を使って守ってもらっていたようだ
なぜ気づきもしなかったのかとさらに頭を抱えたくなった
『なんでそこまで…』
「吸血鬼事情に君を巻き込みたくなかったんですよ。
あとは単純に…僕が△△を欲しいと思ったから、ですかね。餌としてだけではなく△△の全てを」
俺はポカンという効果音が付きそうなくらいに愕然とした
骸に至っては至極真面目な顔で、その言葉の真剣みが増す
『……告白?』
「そうなるんじゃないんですかね?」
まさかと思いつつも首を傾げ聞けば、俺と同じように骸も首を傾げながら答えた
なんで曖昧なんだと思わず口に出してしまったのは仕方ないと思う
むしろ叩かなかっただけマシだろう
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