2…あの子と交わした約束を……君とも

新しく友達になった綱吉君はお母さんに呼ばれ帰っていった。
もちろん明日、一緒に遊ぶを約束をして……

彼が見えなくなってから母の元へと行くと興奮状態の母が誰かに電話をしている。
基本穏やかな母が……なんとも珍しい。


「やっと繋がった。この一大事になにしてるのよ!……豊さん落ち着いて聞いてね?あのソラちゃんにお友達が出来たのよ!」

「な、なんだって!?友達?ソラに!?どんな子なんだ?女の子か?男の子か?写メとった!?」


電話から離れているのに聞こえてくる父の声は母以上に興奮しているのが分かる。
喜んで貰えるのは嬉しいが……ちょっと複雑な気持ちだ。

その後、私に気づいた母と共に帰り晩御飯の時には質問攻めにあい……その日の食卓にはお赤飯が用意されていた。









翌日の昼過ぎに母と並盛公園に向かうと綱吉君と可愛らしい女性が待っていた。
雰囲気が綱吉君に良く似ている。


「こんにちはソラちゃん。私はこの子の母親で【奈々】っていうの。宜しくね」


ほんわかとした優しそうな人で、やはり綱吉君はお母さん似だなと思った。
母達はベンチで話を、私と綱吉君はかくれんぼをすることになりじゃんけんで鬼を決める。
……一発KOで私が鬼だ。


(……フッフッフッ。相手は子供です。どこに隠れるかなんてすぐに分かります……水野ソラ、いざ参る!!)


数え終えた私は隠れてそうな所を意気揚々と探し回ったのだが……数分後、私から笑顔は消えていた。


『………見つからない』


遊具や木の影等を探しても綱吉君は見つからず、私はジャングルジムの上で途方にくれていた。
公園全体を見渡せど、あの無重力ヘアーは見当たらない。


(子供だからと侮っていました。ゴメンよ綱吉君………ん?)


ふと離れた場所にいる子供の集まりを見ると、見覚えのある無重力ヘアーが少し見えた気がしたので目を細めもう一度見てみる。

四人組の小学1、2年生位の男の子達が円になり囲んでいるのは紛れもなく綱吉君で、遠目からでも分かるほどに震えており……一瞬だが涙も見えた。
私はジャングルジムを飛び降り勢いよく走り助けに向かう。

ここは大人の対応をすべきだが私は今5才児。
故にそんなことはしない。
……子供は子供らしく実力行使(ケンカ)!!


『何をさらしとんじゃーー!!』


叫びながら1人の後頭部に飛び蹴りをかました私が見たのは大量に涙を流している綱吉君の姿だった。
こんな小さな子供に一体何をした!?


「このガキいきなり何すんだよ!」
「ひでぇ!やり返されても文句言えねーぞお前!」


ギャアギャアと叫ぶ子供達だったが私の怒りの形相に気づいてからは強くは言わなくなった。
……震えている者もいる。


『……念のために聞きますが、彼に何をしていたんですか?』
「べ、別に何もして……ヒッ!」


1人が嘘を言うのを止めたのは私の顔に青筋が浮かび更に睨んだからである。
身の危険でも感じたのかあっさりと本当の事を話し出した。

彼らの目的は暇潰しと綱吉君の持っているバッジを奪い取る事なんだとか。
言い終わった彼らは走り去り、私は泣いている綱吉君の手を握り桜の木の下に移動をした。


『大丈夫ですよ。もう怖い人達は居ませんから』
「…ウッ…ヒックウッ……ありがと……ウッ」


幼い彼にとって怖くて仕方がなかったのだろう……まだ、体が震えている。
落ち着くまで手を握り座っていたら、綱吉君が下を向いたままボソリと口を開いた。


「……もう…ボクのことキライに…なった?」
『え?……何故そうなるんですか?嫌いになるわけありませんよ!』
「ほんと?……ボクはよわいし…なきむしで……その…」


うつむいたまま黙ってしまった綱吉君。
彼に今まで何があったか知らないが、私はそんなことで人を嫌いにはなれない。

……この世界で初めての友達である綱吉君。
私は前世で同じく初めての友達である女の子との約束を思い出していた。








田舎だった為、近所に女の子は私とその子しかおらず友情を深めるのに時間はかからなかった。
ある日、彼女が突然の思い付きで約束をしようと言い出した事がある。


「ねえ!私達ってお互いに初めての友達でしょ?だからずっとずーっと仲良くしていたいの。だから約束!ゆびきりするの!」
『これまた突然ですね……私も【ウィンリィ】とずっと友達でいたいのでOKですよ』


お互いに小指を絡ませ大きな声でウィンリィは約束事を口にする。
その日は見事な晴天で、彼女の笑顔を……美しい金髪を更に輝かせていた。


「それじゃあいくよ!……私たちは何があってもずっと友達でいます!どちらかが困っているときは必ず助けます。守ります!……なぜなら私達は大切な友達だから!」
『はい!』



まだ幼かった頃の約束を彼女は何年たっても覚えていて……私も忘れることはなかった。
しかし、私は早くに死んでしまったのでずっと……長く傍にいることは出来ていない。
約束を守ることが出来なかったのだ。









「……ソラちゃん?」


昔を思い出していた私は綱吉君の呼び掛けで我にかえり、不安そうにこちらを見る彼に私は頭を撫でながら微笑んだ。

これも何かの縁と思い、今度は私から約束をする。


『……綱吉君。私と約束してくれませんか?ずっと友達でいるために……ゆびきりです!』
「!……する!ゆびきりする!」


キョトンとして徐々に笑顔へと変わった綱吉君と小指を絡ませウィンリィのように大きな声で言う。


『私は綱吉君とずっと友達でいます!何かあれば、困っていることがあれば必ず助けます!……なぜなら私達は大切な友達だから!』
「うん!ボクも約束する!」


満面の笑顔でゆびきりをする綱吉君と私の周りには桜の花びらが綺麗に舞っている。
まるで二人の出会いを祝福してくれているようだ。
綱吉君に笑顔が戻って良かった。

その後、日が暮れるまでずっと遊び続けたが……意外と楽しい。
綱吉君とだからだろうか?








再び得た友と……この世界では最後まで生きていきたいものだ。


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