1…新しい家族と友達

真っ白な空間で私は一人……現実味のない世界で一人だけ立っている。
夢なのだと理解してはいるが寂しさを感じるのは仕方がないと思う。

そんな時に現れるのは決まって彼らだ。



" お帰り!姉ちゃん! "

" ソラ、大丈夫か? "

" 何してるの?早くしないと遅れるわよ! "

" バカソラ!早く来いよ! "

" さあ行こう!ソラ…… "



私を呼ぶ彼らは人種も年齢も違うが大切な人達だ。
呼ばれているが私はただ立って眺めることしか出来ない。
それでも会えたのだから、声が聞けたのだからと自分に言い聞かせて笑顔で別れを伝える。


『ごめんなさい。そっちには戻れないから……今までありがとう!大好きですよ………さようなら』


最後の言葉は泣きそうになり声が小さくなってしまった。
そして、私が目覚めた世界に彼らはいない……










『…………久々に見ましたね』

頬を流れる涙を拭いながら私は起き上がり着替えを初め、外を見ると庭の桜が綺麗に咲いていた。
見つめていると穏やかな気持ちになるのだから不思議だ。


『今日は良いことがありそうですね』


久し振りに皆の顔が見れたのだから心は温かい。
微笑みながら部屋を出た私は台所で料理中の母の手伝いに向かう。

台所では美味しそうな匂いで満ちていて、そこで機嫌良く調理している母に声をかけた。


『おはようございます。今日も桜が綺麗に咲いてましたよ!』
「おはようソラ。今日も早いわねぇ……それに相変わらず桜が好きね」


クスクスと笑う白髪を軽く結った綺麗な女性は、この世界での母で料理がプロ並みに旨い優しい人だ。
ちなみに私の髪も前世同様、白髪で結構気に入っている。

料理の手伝いをするために椅子を運びその上で作業を行った。
……何故なら、私はピチピチの5才児だからだ。
前世で再び死んだ私は記憶を持ったまま転生し、現在に至る。
料理をしながら何気ない会話をしていると、母からある誘いがきた。


「ねぇ?今日のお昼寝の後【並盛公園】に行かない?桜が満開で綺麗なんですって!」
『もちろん行きます!』


私達が住んでいる【並盛町】は桜が多く、特に【並盛公園】は公園を囲むように植えられていて人気のスポットなのだ。
母と二人で話していると父が寝癖も直さずにやって来た。


「おはよう……なに楽しそうに話してるの?父さんもまぜて!」
『おはようございます。今日のお昼に桜を見に公園へ行くんですよ!』
「豊さんは仕事があるから無理よ?」


あからさまに落ち込む父に母は作ったばかりの料理を食べさせてあげた。
……つまり「はい♪あ〜ん♪」である。
機嫌が直った父と嬉しそうに笑う母をみて、恋人時代はもっとラブラブだったのだろうと思う。

朝食を終え、父は仕事へ母は家事を私は庭で修行を始めた。
この世界は不思議なもので鍛えれば鍛えるほど強くなるのだ。
身体能力も面白いぐらいに上がるので……このままいけばどこぞの戦闘キャラになるだろう。


(……前世も驚きましたが、この世界も何かとありそうですね)








昼寝を終えて母と共に離れた場所にある【並盛公園】に出かける。
着くと平日と言うこともあり人は少なく、桜を見渡すことが出来たので私は大いに喜んだ。
5才児にとって大人の集団は巨大な壁なのだよ。


「綺麗ねぇ……フフフ。日本人で良かったわぁ♪」
『全くですね♪……お母さん、公園内を一週しましょう!』


手を繋ぎゆっくりと桜を眺めながら歩いていると、遊具で遊ぶ同年代の子供達が目に入った。
母はそれをみて名案とばかりに私の両手を握り、瞳を輝かせ口にする。


「ソラ!せっかくだからお友達を作ってきなさい!」
『……え?』


目をキラキラさせる母に嫌だなんて言えなかった私は、とりあえずジャングルジムの上に登っていく。
子供達を観察をするためである。

ちなみに離れた場所では母が、先程とは違って心配そうに私を見ていた。
子供達の和の中に入るどころか一人で遊具を登っているからだろう。


(子供らしくは出来ますが……あそこにいるのはガチの5才児達……大人ならまだしもあの子達相手だとボロが出そうですね)


眉間にシワを寄せ眺め、諦めようかと思ったら遠くから見守っている母から声援がとんできた。
それはもう大きな声で……


「ソラ〜!頑張るのよー!笑顔よ!笑顔!」

『……oh』


白目でジャングルジムの上に居る私に周りの子供達の視線が突き刺さる。
視線に堪えられずに降りようとしたら、離れた場所で桜の木の下にいる男の子が目に入った。

その子の特徴があまりに珍しかった為、私の瞳にハイライトが戻る。


(おお!なんて見事な無重力ヘアー!………うむ。人数までは言われてませんし……やはり、気になる子と!個性的なあの子と友達になりたいですね)


彼の個性的な髪型だけではなく、何故か気になって仕方無い気持ちがあり、私は彼の所に走り近づいていく。
近づく私に気づいた男の子は挙動不審になり目を反らした。


(……あれ?目をそらされた?……いやいや………見なかったことにしましょう)


彼の前まで来た私は、まず子供らしく元気に挨拶をする。
第一印象は大事だから笑顔も忘れずに……


『こんにちは!』
「………こ、こんにちは」


小さな声でも返してくれたのは嬉しい。
相手は子供なので回りくどいことは無しで直球勝負!
笑顔のままで手を差し出し、いざ言わん!


『突然にすみません。私と友達になって下さい!』
「へ?……えぇ!?」


突然のことに見事なリアクションを見せてくれた男の子は何度も確認をしてきた。
アワワと慌てる様子が可愛い等と口が避けても言うわけにはいかないので堪える。


「ボ、ボクと?……友達?…なんで?……えと…」
『なんと言うか、貴方を見つけたら目が離せなくて……一目惚れってやつですかね?』
「えぇ!?」


冗談ぽく言ったのに顔を真っ赤にさせるこの子は純粋な本当の5才児なのだと改めて思った。
……からかいたくなるが抑えよう。

そして、『貴方の無重力ヘアーに惹かれました!』……と、言っていたら更に?が増えていたかもしれない。


『私は水野ソラ!是非とも私と友達になって下さい!』


再び手を差し出し頭を下げると、遠慮がちに手を握ってくれた男の子は頬を赤らめながら自己紹介をしてくれた。

私の方が背は高いので彼の大きな瞳による……上目遣いが私を襲う。
だが、ここは空気を読んで心の中だけで萌え苦しむこととする。


「ボクは…【沢田綱吉】。よろしく、ソラちゃん!」


ぎこちなく笑っていたが綱吉くんの笑顔はとても可愛いらしい。
私の手を握る彼の手は小さく……それでいて温かった。










【沢田綱吉】……彼との出会いは私の人生を大きく変え、大切な親友となる。


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