9…病気には心の栄養補給も大事!

試験が終わり私と綱吉は帰宅中。
獄寺君とリボーン君は破壊し尽くしたグラウンドを何とかするため学校に残った。
いったいどう処理するのか気になるが体調が良くないので帰ることにした。

(……しんどいです。帰ったら早くに休みますか。)

体の怠さが増すなか隣を歩いていた綱吉が眉間にシワを寄せ話しかけてきた。

「……本気でマフィアになるつもりなの?」
『はい。リボーン君の勧誘を断る自信が無くなりましたし……何よりファミリーに入った方が手助けもしやすくなりますからね。』
「っ!!でも!」

綱吉は反対のようで立ち止まり私をまっすぐに見ている。
眉間のシワは更に深くなっていた。
彼の様子からマフィアというのは遊びではなく本物の【危険な世界】なのだと改めて知る。
しかし……綱吉には悪いが、それは私がマフィアになる事を決意するのに十分な理由となるのだ。
前世での経験もあり裏の世界がどんなに危険で困難な所か知っている私には見て見ぬふりは出来ない。
ましてや綱吉は私が今まで会ってきた人の中で一番に心優しい人で争い事には向いていない。
そんな彼を私は守りたい。もう二度と友人との約束を破ることも失うこともしたくないから…。
だから私もまっすぐに綱吉を見て話す。

『でも、決めたのは私です。決めたからにはいい加減なことはしません。……今まで修行を欠かさなかったのは大切な人達を守る力が欲しかったからです。……あと趣味でもあります。』
「…………。」
『きっかけはどうあれ、今の私はマフィアになるというより…綱吉の友人として仲間として…支えになりたいんです。だから【綱吉のファミリー】に入ります。』
「っ!……分かったよ。でも、オレはマフィアになんてならないからな!」

複雑な心境ではあるようだが最後の【ならない宣言】は胸を張ってハッキリと言っていたので本気だと分かった。

『はい。綱吉の人生ですから好きに決めて良いんです。私は何の文句もありません。……綱吉がマフィアになってもならなくても我らの友情は永遠不滅なのです!』ドヤッ
「そのドヤ顔でいつも台無しになってることに気づいてる?……でも、ありがと。」

最後に笑ってくれたのは良いが、私のドヤ顔はそんなに酷いのだろうか?
……いや使うタイミングが悪すぎるのか。
その後は途中参加していた【ランボ君】について話が盛り上がった。
私に話さなかったのは【可愛いもの好き】の私とランボ君を会わせたら更に面倒なことになりそうだったから…らしい。

「ソラは時々その……おかしくなるからね。いろんな意味で……。」
『失礼な。私だってそれなりに理性で押さえられるようになりましたよ。』
「ああ……【それなりに】なんだ。」

会わせるべきじゃ無かったと呟く綱吉に私は如何に心の制御が出来るようになったかと可愛いものに対する愛を力説し続けた。
別れる頃には綱吉の方がぐったりとしていた。








【数日後】

綱吉に力説をしたあの日から私は高熱に悩まされている。夏風邪はなんとやら……私はバカではない!

「37.8度…なかなか下がらないわね。」
『でも病院でもらった薬のおかげで楽にはなってます。』ケホッ
「それは良かったわ。お母さんちょっと買い出しに行ってくるけど…大丈夫?」

心配してくれる母に私は笑顔で大丈夫だと伝えると優しく微笑み「行ってきます。」と言って出掛けていった。

(……情けないですね。どんなに鍛えても病気ばかりはどうにもならないようですね。)ケホッ

まだ熱があり頭がボーッとするがアイス枕が程よく冷やしてくれるので気がついたら眠っていた。
それからどれ程の時間が過ぎたのか分からないが…とても元気な聞き覚えのある笑い声で私は目を覚ました。

「ガハハハハ!」
「こらっ。静かにしろランボ!」
「ツナさんも声が大きいですよ!」

まだ寝ぼけているが部屋にいる一人が綱吉であることは理解できたので名を呼んだ。

『……綱吉?…何をしているんですか?』
「あっ!ごめんソラ。起こしちゃったね。」
「お!起きたもんね!ランボさんが来てやったぞ!」
「ランボちゃん駄目ですよ。彼女は病人なんですから。」

私が起きたことに慌てて謝る綱吉と女の子に抱っこされて元気に話すランボ君………抱っこしているポニーテールの黒髪美少女は誰だろうか?
めっさ気になる!
こんな状態でなければランボ君をモフモフしながら彼女について連続質問投球をするのに………おのれ風邪め!
とりあえず上半身だけ起き上がると綱吉が支えてくれた。
風邪がうつるといけないのでマスクを着けながら彼女達の事を聞いた。

『ありがとう。あの…なんでここに?それと彼女達は誰ですか?』
「ごめん。ビックリしたでしょ?…お見舞いに来る途中に美夜さんにあって、様子を見てて欲しいってお願いされたんだ。……こいつらは勝手についてきて……」
「はじめまして!私は【三浦ハル】といいます!…おやすみ中に騒がしくしてしまいすみませんでした。」

女の子は一歩前へ出て元気に自己紹介をし先程の事を謝罪し頭を下げた。
なんともしっかりしたお嬢さんだ。
最近は知り合う人間が個性的な方ばかりだったから彼女のような人は……和む!安心する!何故だろうね!?
心の中でテンションを上げているが表面に出す元気は無い。しかし申し訳なさそうにしている彼女に気にしていないことを伝えるため笑顔で返事を返す。

『大丈夫ですよ。私は水野ソラといいます。よろしくお願いします。三浦さん!」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!私のことは【ハル】と呼んでくださいね!」
『では私のこともソラと呼んでください!』
「ハイハイ!オレっちはボヴィーノファミリーのランボさんだよ!」

お互いに笑顔で話していると抱かれていたランボ君が私の隣に降りてきて自己紹介をした。
近くで見ると更に可愛い。
何この子……5歳ってこんなに小さかったっけ?めっさ可愛いんだけど!
顔の周りを覆うほどのアフロはどのようにして出来たのかも気になる。
……駄目だ。モフモフしたい!

『モフ…ゲフンッ……こちらこそよろしくねランボ君!」
「おう!よろしくしてやるもんね!」
(……モフモフって言うつもりだったな。)

挨拶が終わるとランボ君は机の上に置いてある、ぬいぐるみを抱き抱えながら目を輝かせ取ってきた。

「ねえねえ、これなに?黒猫?化け猫?」
「こ、こら!!勝手にさわるんじゃない!…大人しくしてろよランボ!」
『大丈夫ですよ。それは母の手作りで【クロスケ】といいます。…ランボ君とクロスケ大きさ同じですね。』クスッ

自分と同じ大きさのぬいぐるみを抱き抱えながらはしゃぐランボ君は私の心を癒すのに十分だ。
しかしランボ君にとって同じなのは嫌みたいで背比べをしだした。

「違うもんね!オレっちの方がおっきいもんね!!」
「うーん…確かに若干ランボ君が大きいですね。」
「髪の毛含めたらランボの勝ち…無ければ負けだな。…そんなことよりソラ、何か欲しいものとかない?まだ熱があるんでしょ?」

綱吉が心配してくれているのに私の耳には届いていなかった。
なぜなら必死につま先立ちをし大きく見せようとするランボ君が可愛すぎてそれどころではなかったのだ。

(……ああ、ランボ君小さいなぁ。必死になってる姿も良い!それに子供って暖かいんですよね。……可愛いですねぇ。)ホゥ
「ソラ?」
ハ・ラ「?」

私が目の保養を終えると休んでいた間にあったことを皆が嬉しそうに話してくれた。
獄寺君のお姉さんでリボーン君の愛人でもある殺し屋【ビアンキ】さんの事、ハルちゃんとの出会いなど私が休んでいる間にもっと賑やかになっていたようだ。

『綱吉の周りは随分と賑やかになりましたよね。』
「まあね。……まともな人は殆どいないけど…。」
『…お疲れさまです。』

影を作りながら答えた綱吉を見るとメンタルゲージがかなり減っているのだなと思った。
本当にお疲れさまです。
そのあとも母が帰ってくるまでの間、3人は嫌な顔一つせずに私の世話や話し相手になってくれた。
久々の賑わいだったので楽しかった。
今度、何かお礼をしよう。






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