5…【死ぬ気弾】

本日も快晴で過ごしやすい一日になりそうだ。
いつも通りに綱吉と合流し学校に向かう。


「おはよ!ソラ」
『おはよう!綱吉。今日もご機嫌ですね』
「まあね♪あれ以来、誰も俺のこと【ダメツナ】って呼ばないし、何か一目置かれるようになった気がするんだよ……不気味がる奴もいるけどね」
『ドンマイ』


持田先輩に勝ってからというもの綱吉を馬鹿にする人が急激に減り、声をかけられる事が多くなったそうだ。
……まあ、彼が言ったように不気味がる子達もいるが、それでも最近の綱吉は朝から笑顔でいることが多い。
そして今も笑いながら彼は言う。


「……でも照れくさいけど嬉しいや!こんな事ならガンガン死ぬ気弾を撃ってもらうのも悪くないかなぁ♪」
『し、しかし、その代償として【変態パンツ男】の異名を取得することになりますよ!?』
「んなっ!?嫌だよそんなの!!ていうか冗談に決まってるだろ!」
『なら良かったです……綱吉が変な趣味に目覚めてしまったのかと…』
「嫌なこと言わないでよ」


私の一言で綱吉のテンションが下がってしまった。
申し訳ない綱吉よ。
でもね?毎回パンツ姿で暴れてたら将来、後悔するからね。
黒歴史どころじゃなくなるから……できれば、死ぬ気弾は使わないでほしい。










【1年C組】


教室に入るなり綾香ちゃんが走ってやって来た。
彼女もまた朝から笑顔満点だ。
うむ。可愛い。


「おはよう。ソラ君♪」
『おはようございます。綾香ちゃんもご機嫌ですね』
「(も?)……実はさっき良いこと聞いちゃったの!なんでも明日、イケメンの転校生がやって来るんだって♪……確かクラスはA組だったかな?楽しみ〜♪」
『こんな時期に珍しいですね』
「……確かに。訳ありかな?」


同じクラスに転校生がやって来たなら少しは興味があるが、別のクラスなのでさほど気にはしなかった。
しかし、その転校生とは長い付き合いになるのだが……この時の私はもちろん知らない。








【体育館】


今日は球技大会で私は選手ではなく観戦組……つまり暇人である。
ちなみに綾香ちゃんは選手なので今は居ない。
彼女の試合まで時間があるので暇潰しに図書室へ向かうことにした。


(……やれやれ。あんなに人が居たのでは観戦どころではないですね)


殆どの生徒が集まっていたのでろくに見ることも出来ない状態だった。
生徒が多いのも問題だなと思ったが……まあ、綾香ちゃんの時は人を押し退けてでも前へ向かうとしよう。


その後、廊下を歩いていると何処からかコーヒーの良い香りがしてきた。
匂いを辿ると非常用ベル付きの赤いボックスからリボーン君が本格コーヒーを片手に現れ挨拶をする。

………なんてことしてるのリボーン君。


「ちゃおっス。さぼりか?ソラ」
『こんにちは。女子の試合まで図書室で読書しようかと思いまして』


普通に答えたがツッコミした方が良かっただろうか?
この場に綱吉がいたならキレの良いツッコミをしてくれていただろう。
あと、何やら素敵な小部屋が見えるのだが……見なかったことにした方が良さそうだ。

私が素敵な部屋から静かに視線を逸らすと同時に、リボーン君が部屋から出てきた。


「そうか。暇ならついてくるか?面白いものが見れるぞ。」
『……綱吉の事ですか?』
「そうだぞ。よくわかったな」
『君については綱吉からよく聞いてますから。何となく予想はつきました。また死ぬ気弾を撃ち込むんですか?』


【死ぬ気弾】の名を出した瞬間、彼の眉がピクリと反応した。
表情をあまり変えない子なので変化があればすぐにわかる。


「ああ。……もしかしてツナの奴、全てをお前に話したのか?」
『……全てかは分かりませんが、ある程度は知ってますよ。登下校の時の話題は大抵リボーン君に関係することが多いので』
「マフィアについてもか?」
『はい。綱吉がボンゴレ10代目候補でリボーン君は綱吉を立派なボスにする為にやって来たんですよね?……他にも【死ぬ気弾】など色々と…」


登下校の時やメール等でよく話を聞いていた私は、ふとこの事を私に話してリボーン君に怒られないか聞いたことがある。

綱吉は他の人には話して欲しくないが、リボーン君に関しては自分からマフィアだ等と言っているから問題ないだろうとの事だった。
しかし、目の前の彼の様子から駄目だったかもしれないと思い始める。

あかん。相手が赤ちゃんだからかペラペラと話してしまった……と、嫌な汗を流している私をジッと見つめるリボーン君。
………ヘルプミー。


(本当に全てを話したのか……誰にも話さず、隠そうとするあいつが…)
(……綱吉…怒られたらごめんなさい)


心の中で何処かにいる幼なじみに謝罪していたらリボーン君は片方の口元をつり上げていた。
……なんて良い笑顔なんだ。


「今日は時間がねぇから、また今度だな。ソラ、体育館に行くぞ」
『……はい』


何がまた今度なのかは分からないが、取り敢えず一緒に体育館へと向かった。






【体育館2階】


ガチャコン!という日本では聞き慣れない音をたてているのは銃であり、それを手にしているのは赤ちゃんだ。

何だこの光景は……


『……………………』


現在、私達は立入禁止の2階に居る。
そして、もう一度言うがリボーン君の手には銃があり彼の表情は今までで一番の笑顔だ。
大切な事なのでもう何度でも言うが……彼の持っているアレは本物の銃である。
まさか今世でも目にするとは思わなかった。


『………そういえば。さっきは何処に行っていたんですか?』
「ツナの様子を見に行ってたんだ。まぁ、問題はなかったがな」フッ
『そうですか(……嬉しそうですね)』


暫くすると歓声が増え、皆の視線の先には眉間にシワを寄せ立っている綱吉がいた。
何かあったのか彼の表情は真剣そのものだ。
そんな綱吉を見ていたリボーン君は嬉しそうに呟いた。


「わかればよし」
(!……ああ、確かリボーン君は読心術が使えるんでしたね)
「くらえ!!」

「うぎゃぁ!」


弾は綱吉の両太ももに命中し彼は痛みで座り込んでしまった。
私も前世で撃たれた経験があるので分かる。
あれは痛いなんてものじゃない、激痛だ!
綱吉は毎回よく堪えられるなと感心するし……気の毒にとも思う。


『………あれ?何もおきませんね』
「安心しろ。すぐに分かる」


見た目が変わらない綱吉の姿に小首を傾げていると
、ホイッスルがなり試合が始まった。
リボーン君の言う通り、すぐに効果は現れる。


「くるぞツナ!ブロック!!」
「オッケー!」


ブロックの為に勢いよく跳んだ綱吉は軽くネットを越えるジャンプをした。
これには私も会場の生徒達も綱吉自身も驚き目を見開く。


『リボーン君、あれも死ぬ気弾の効果ですか?』
「ちょっと違うぞ。そもそも【死ぬ気弾】ってのはボンゴレファミリーに伝わる特殊弾が脳天に被弾した時の俗称にすぎない。この特殊弾は被弾した体の部位によって名称も効果も変化するんだ。因みにさっきのは【ジャンプ弾】だぞ」
『なるほど、体の各部の名前の分だけ効果があるんですね』


リボーン君の説明は分かりやすく本当に家庭教師なのだなと思った。
しかし、なんて少年漫画のような世界なんだろうか。
私の錬金術もここでは非現実的で異常な能力。
だから隠し続けてきたのだが……この世界では珍しくないのかもしれない。


(綱吉は私の【本来の】身体能力も知っていますし……錬金術について話しても良いかもしれない……何より綱吉はきちんと話してくれましたし)
「どうかしたか?」
『ちょっと考え事を……もしかして読心術使いました?』
「安心しろ。誰にでも使う訳じゃない、特に女にはな……必要とあれば別だが」


そう言いながらニヤリと笑みを浮かべるリボーン君。
その笑みが何を意味するのか深くは考えまい。


『そうですか。疑ってすみません……リボーン君はこの後どうします?私は友達の応援に向かいますが』
「そうだな、またアジトで一杯やるとしよう」


赤ちゃんがコーヒーを飲んでも良いのかと聞きたいが、彼の存在自体が突っ込みどころ満載なので聞かない。

別れ際のリボーン君は満足と言った感じだった。
私は綾香ちゃんの応援の為に下へと降りていき人混みを無理矢理進んだ。












その日の放課後、綱吉は嬉しそうに大会での出来事を話してくれた。
よほど嬉しかったのだろう。
彼の笑顔が話が途切れることは一度もなく、私まで嬉しく思うよ。




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