33…可愛いは正義!

「君ね…回復したばっかなんだから走っちゃダメでしょ。」
『すみません…』

現在、新幹線の3号車にてワクチン接種と治りきっていない傷の具合を診てもらっている。
時間を間違えた私は全速力で走りギリギリ間に合ったのだ。
汗だくの私を見たシュラさんはギョッと目を見開いていた。

「まさかお前まで参加させてたとは…聞いてねぇぞ。あんにゃろ…」
『大丈夫ですよ。傷も殆ど無くなりましたから。』
「いや。酷かった火傷はまだ治りきっていないね。」
「治ってないってさ。」
『で、でも動いても問題はないですよね!?』
「まあね…でも、眠りっぱなしだったんだからさっきみたいな過度な運動は避けるようにね。」
『は、はい。』

青の炎による火傷は【絶】でも治りが遅く、顔と腕の火傷はまだ完治していないのだ。
とはいえ…塗り薬を塗り包帯を巻いておけば痛みもないので問題はない。
新幹線は出発しているのでシュラさんは皆に説明をしに隣へと移動した。
汗だくの包帯を換えてもらい顔の薬草湿布も貼ってもらった私は隣の4号車へと移動。
すると左前の席に燐と神木さんが…後ろに京都組、その後ろにしえみが座っていた。
私がいる事を知らなかった皆は驚いている。

神「なっ!?なんでアンタがここに居るのよ!」
志「あ、あれ?ソラちゃんって重傷やなかったん?」
猫「そうですよ。あんなに弱ってはったのに…」
勝「どういうことや…?」

しえみは座席からやって来て荷物を持とうとしてくれたが先に頬をムニッと軽くつまんでみた。

「ほぅっ!?」
『皆さん心配してくれてありがとうございます。私なら回復も順調に進んでこの通り元気です!…ちなみに弱ってはいましたがそこまで重傷ではありません。』

ガッツポーズをとり笑っていると燐が私の名を呼び立ち上がり皆は口を閉じた。
あの志摩君でさえも黙っている。
どこか不安げな表情で燐は私の姿を見て話しだす。

「その……傷…大丈夫か?雪男から酷く弱ってたって聞いたけど俺…見舞いに行けなくて…つか、2日間目を覚ま…『落ち着こう奥村くん!』…ぐほぉっ!?」
「「!?」」
『おや?気分が優れないようですね。外の空気でも吸いに行きましょうか。』
「な、何しやがる!?離せ…てか今外に出たら確実に死ぬって!」

うまく話せないようなので一度リセットするつもりで強めのチョップを脳天に落とした。
そして、首に腕を回しドア向こうへと引きずっていく。
それを塾生や他の祓魔師達は口や目を開けたまま見届けていた。

神「………本当にもう大丈夫みたいね。」
猫「そ、そうやね…」
志「にしても…なんてメチャクチャな連れ出し方や。」
杜・勝「……………。」




二人だけになったので話しやすいかと思ったが次は黙りこんでしまった。
カバンに入っていたお茶を2つ取り出し1つを燐に渡し話題をふる。

『燐…極刑回避おめでとうございます。条件守れてます?』
「やめろよ!なんでよりにもよってその話題!?」
『じゃあ、どんな話題なら良いんですか?言ってみて下さいよ。』
「うっ……それは…」

目を逸らし頬をかく燐は間をおいてから口を開いた。

「…………聞いてると思うけどさ。俺…サタンの息子なんだ。つまり…悪魔なんだよ。」
『ご安心ください。その事はもう随分と前から知っています。』
「え!?マジで!?」

目を見開き驚く燐に気づいたキッカケや情報提供者の事を話すとその場に腰を下ろした。
私も隣りに座りお茶を一口飲む。

「んだよ。…それなら言ってくれればいいじゃねーか。」
『前に言いましたよね?話してくれるまで待つと…その後なんですよ。秘密を知ったのは…』
「………ジジイの事は?」
『聞いていません。大体の予想はつきますが……貴方達が話してくれるのを待ちますよ。』
「そっか……じゃあ、この遠征が終わって落ち着いたら話すよ。」
『はい。』

燐は喉が渇いていたのか渡したお茶を一気に飲み干した。
プハーッと飲み終えた彼は一呼吸だけして私をまっすぐに見る。

「ソラ…俺を止めてくれてありがとう。」
『…どういたしまして。』

傷を負わせた事への謝罪かと思ったらお礼の言葉で…返事を返したあと二人して笑い合う。
やはり、燐には笑顔が一番だ。

「はは……やっぱり変だよお前…普通は気味悪がったり避けたりするだろ。俺の炎をまともにくらっといて怯えたりもしねーし。」
『怯えねぇ…そういう事は一度でも私に勝ってから言ってくださいよ。それに昔からの暴れ小僧に炎が追加されただけじゃないですか。村人Aがワンランクアップしたぐらいで…HAHAHAHA!』
「んだとコラァ!なんなら今から決着つけてやろうか!?」
『させぬ!』

燐が仕返しをしてこようとしたので私は包帯を巻いた腕を上げ見せた。
すると動きが止まり苦虫を噛んだような顔で汗を流している。

「うぐっ…きたねーぞテメェ。」
『フッフッフ。使えるものは使わないと…スキあり!』
「んげっ!?」

再びチョップを脳天に落とし燐を倒すことに成功。
席に戻るために立ち上がった私は頭を抑え睨む彼に…雪にも言ったことを笑顔で伝えた。

『貴方がサタンの息子だからといって一緒に過ごしてきた日々や燐の優しさからの行動が消えるわけではありません。』
「…な、なんだよ…急に…」
『私は人間だから貴方の友人になったわけではありません。奥村燐だから一緒にいたいと思えたんです。……私は燐の相手を思いやる気持ちが優しさが好きですよ。』
「!」

少しの間 放心状態だった彼はハッと気づき急いで立ち上がり先に進み始めた。
ドアの前で照れ隠しの変な笑いをやめた燐は軽く振り向いて…

「……ソラ…ありがとな。」
『はい!』

4号車に戻るとみんなの視線を集めたが気にすることなく燐と神木さんが座っている席の反対側に腰を下ろした。
しえみの隣が良かったが先客で埋まっているので諦めるしかないのだ。
そして、カバンからピカを出してあげようとしたのだが既にいない。
一瞬 焦ったが隣の神木さんの膝の上で眠っているのを見つけ一安心。

『良かった…来る途中で落としたのかと…』
燐「さすがに落ちたら起きるだろ。」
神「この子の傷…もう大丈夫なの?」
『はい。回復が早くて傷跡も残っていませんよ。』
燐「そっか……コイツ小さいのに強くて俺達を逃がすために頑張ってくれたんだよな。」

燐は寝ているピカの頭を撫でながら今度スキヤキをご馳走してやると約束していた。
ピカは撫でられて気持ち良かったのか握っていた神木さんの服に顔を埋め「チャ〜♪」と鳴いている。
これには神木さんのポーカーフェイスも崩れる寸前だ。

「〜〜っ!!」
『神木さん、すみませんがピカが起きるまでの間そのままでもいいですか?』
「……し、仕方ないわね。良いわよ。」
『ありがとうございます。』

その後は主に燐と神木さんの二人と話をして過ごした。
神木さんの話によると悪魔と人間の血縁者はざらにいいるそうだ。
むしろ祓魔師にはそういう人達が多いらしい。
燐の何が問題かというとサタンの息子であること、それが騎士団にとって損か得か測りかねているからまだ殺さないのだと説明してくれた。

「たかがそれだけの事に【バカ】みたいに いっちいち大騒ぎなんてしてられないわ!!」
「『…………。』」

声を少し上げバカの部分を強調していた事から後ろの方達に向けて言ったようだ。
だが、誰一人として話さない。
気づかない燐は…

「……まゆげ…」
「『まゆげ!?』」
「俺を励ましてくれてんのか…」
「は!?」
「やっぱお前っていい奴だな!」

相手の好意を素直に受け止めれない彼女には燐の純粋な言葉と眼差しは苦手のようだ。
このまま燐のペースで行くと神木さんのツンの部分が強く現れそうなので間に入ることにした。

「何でそーなんのよ!違うわよ!てゆうか何まゆげってアダ名!?あたしは神木出雲よ!」
『彼女のアダ名は【いずもっちゃん】ですよ!』
「黙れ!白髪!」
『ヒドイわ!せっかくいい事を教えてあげようと思ったのに…』
「そのわざとらしい喋り方なんとかならないわけ?」

睨まれたが気にすることなくピカの鼻筋を撫でてみるように言うと彼女はすぐに行動にうつした。
すると、くすぐったいピカは笑いながら神木さんの撫でている指をキュッと握りしめたのだ。

「なっ!?」
「どした?」
『フッフッフ。』ドヤッ
「…お前もどうした?」

萌え苦しんでいる神木さんに燐は下の名前で呼び、お礼を伝えていたが彼女はそれどころではない。

「べ、別に…礼なんていいわよ。……というか…下の名前で呼ばないで…ちょうだい。」
「え?」






その後、何事もなく京都へと到着。
ピカの可愛さは世界一!!







〜続く〜

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