11…ネタバレと三人で過ごす時間

旧男子寮のキッチンでは今日も美味しそうな匂いが漂い、料理中のソラはご機嫌だ。
そんな彼女を入口付近で見ているのは寝癖が直っていない燐。
彼の気配に気付いたソラは振り返り、満面の笑顔で挨拶をした。

『おはようございます!今日も見事な寝癖ですね!いっそ坊主にします?それともスキンヘッド!?』
「しねーよ!何で朝からそんなテンション高いんだよ!?」

包丁片手にボケをかますソラにいつものようにツッコミをする燐。
そんな彼にソラは先程とは違い真面目な顔で包丁を置き近づいていく。
目の前まで来た彼女は燐の両肩に手を置き、彼は驚き汗が一滴流れソラの言葉を待った。

『私は今まで隠していた力の一部を昨日の夜……燐に話しました。そしてまだ披露していない術がありますので楽しみにしていて下さい!私はもう隠しませんよ!これからはオープンで生きていきます!!HAHAHAHAHA!!!』
「…な、は!?……てか、うるせぇーー!!」

途中からノンブレスノンストップで話し、テンションも徐々に上がっていった彼女の頭を叩いた燐だったが効き目はなかった。
更に彼女はドヤ顔で続ける。

『フハハハ!!いつの日か【頼む!姉ちゃん!】って言わせてあげますよ!』
「誰が言うか!お前は同い年だろ!!何で姉ちゃん!?つか、今日のお前すんげーウゼーなおい!」

あまりの騒がしさに雪男が様子を見に来るまでの間、二人はこのようなやり取りを繰り返していた。
雪男のソラを見る目がイタイ人間を見るかのようであったが……本人は見なかったことにしていた。

「………病院に行く?」

雪男が眉間にシワを寄せ真剣な顔で聞くが、彼女は笑顔で断る。
その後、朝食を食べながら二人に簡単な【念】についての説明を始めたソラに雪の連続質問投球が投げ込まれた。
しかし、時間がないため昼休みに集まり詳しく話すことに決まる。
登校中に雪男はため息混じりに何かを納得したようで、ソラは気になり聞くと彼は苦笑しながら答えた。

「昔から暴れる兄さんを止められるのは父さんだけだった。でも、ソラは知り合った当初から兄さんを力ずくで止めてたから……あの時は修道院の皆が驚いたよ。父さんなんか目が飛び出すんじゃないかと思うぐらいにね」クスクス
「……そんなことあったっけ?」
『ありましたねぇ……』

燐はとぼけながらも口は弧を描き、ソラも笑顔だ。
年齢が上がるに連れ、特に獅郎が亡くなってからは雪男が昔の話を楽しげに話すのは減っていた為、二人は嬉しいのだ。

「何言ってるの?何回もあったじゃないか。喧嘩もソラと父さんが勝ってたしね……一度も勝てなかったんだよね?」
「ぐっ……痛いとこついてくんなよな……でも、昔の話だ。今の俺ならぜってー負けない自信があるぜ!」

よほど自信があるようで胸を張りドヤ顔でソラを見る燐……に対して彼女は目潰しをした。
痛みで叫び転がる兄を放置し、ソラと弟は話を続ける。

「……父さんとの勝負をしているのを何度も見たけど、パワーもスピードも明らかに普通の子供じゃなかったから、さっきの話を聞いて納得したよ………ましてや兄さんの力を押さえるなんて【普通の人間】には出来ないからね」
『………?』

何やら引っ掛かる言葉があったが、今の和やかな空気を壊したくない彼女は黙っておくことにした。
ちなみに、彼らの前では燐が痛みに耐えながらうつ伏せ状態でプルプルと震えている。

『私からしたら雪の職業の方が普通じゃないと思いますよ……獅朗さんと雪が祓魔師だなんて夢にも思いませんでしたよ』
「ハハハ…でもその普通じゃない職にソラも就くんでしょ?」
『はい!私の力を有効に使える唯一の職ですからね』

二人が笑いながら話していると燐が復活し、ソラを鬼の形相で追いかけ始めた。
彼女は笑いながら走り逃げ、雪男はそれを苦笑しながらも見届け三人はきちんと登校。

「待てコラぁー!!今回ばかりは許さねぇからなぁ!!」
『HAHAHAHA!!』
「……やれやれ」

その日の昼に三人は集まり【念】について詳しく……時に談笑も交えながら過ごしていく。
三人が集まり長いこと笑って話すのは本当に久し振りなので、ソラはこの時間が続けば良いのにと思うが昼休みはあっという間に過ぎさった。




それからは何事もなく日々が過ぎて行き、夏休みまで1ヶ月半となった。
夏休み前には【候補生(エクスワイア)認定試験】があり、受かれば今よりも専門的な実戦訓練が待っている。
その為、試験はそう容易いものではない。
雪男は試験に備えるために1週間の強化合宿を行う事を皆に伝え、プリントを配りながら説明をする。

「合宿参加するかしないかと……取得希望の【称号(マイスター)】をこの用紙に記入して月曜までに提出してください」

配られた用紙を見て【称号】が何なのか分からない燐は隣のしえみに聞こうとするが…

「マイスター?……称号って………」
「え?」
「いや……」

途中でしえみに聞くのを止め、ソラの方をチラ見したがすぐに目をそらした燐は「なんでもない」と言って勝呂君達の所に行ってしまう。
ソラはいつもと違う様子に首を傾げる。

『……どうしたんでしょうか?』
「きっと、男の子同士の方が楽しいんだよ」

しえみの言うとおり燐は楽しそうに称号について話している。
しかし、ソラは用紙を見ているしえみの横顔が寂しそうなのが気になって仕方がないようだ。

『何か悩みごとですか?……燐と何かあったとか?』
「へ!?……な、なんで?何もないよ?燐とも……仲良しで…」

顔を赤くし否定していたしえみだが燐の名を出した瞬間、頭を下げ声も小さくなっていった。
そこで、二人だけの方が話しやすいと考えたソラはある事を思いつく。

『しえみさんや、もし良ければ今日は私の部屋にお泊まりに来ませんか?』
「………え?」

ゆっくりと頭を上げたしえみは何を言われたのか分からないのか固まっていたが、次第に理解し顔を赤くし喜びの表情になる。

「……お泊まり!?……わあ!私、お友達の所にお泊まりするの初めてだよ!本当にいいの!?」
『イエス!』

親指を立てて返事を返したソラに彼女は更に喜び笑顔になった。


(フッフッフ。今夜は二人だけの女子会です!!)









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