8…京都出身の仲良し三人組

塾に通いだしてから1週間が過ぎた。
まだまだ知識不足ではあるが少なくとも燐よりは上だ。

(……まあ、燐は授業の殆どを寝て過ごしていますしね)

お昼になったのだが、一緒に食べる予定だった子達は部活の先生に呼ばれて行ってしまったので一人だ。
部活に入っていない私は天気が良いので外で食べようと思い、ベストな場所を探して歩いていると遠くから名を呼ばれた。

「ソラちゃーん!一緒に食べへーん!?」
『………?』

声の主は同じ塾のピンク頭の男子で、今まで一度も話したことがないにも関わらず名前呼び。
なので別の同名の人に話しかけたのかと思ったが、彼はこちらに走って来ているので私で間違いないようだ。

「ソラちゃんお昼まだやろ?せっかくやし俺らと食べへん?」
『……えっと【志摩】君ですよね?確か…』

塾では燐としえみの二人と話すだけで他のメンバーとはまだ話したことがなく、名前も授業で指名された時に顔と名字を覚えただけだった。
なので、こんなにもフレンドリーに話しかけてくれるとは思いもしなんだ。
そして、その彼はニコニコと嬉しそうに話を続ける。

「そうそう!覚えててくれたん?嬉しいなぁ……せっかくやし【坊】と【子猫さん】も紹介しよ。同じ塾生同士やから話も弾むで?」
『確かにそれは良いですね。では宜しくお願いします』

私も他の塾生に興味があったので快く了承すると志摩君は嬉しそうに案内してくれた。
歩いて行くと大きめの木の下に男子が二人座りこちらを見ている。

「坊!子猫さん!ソラちゃんOKしてくれましたで!」
「……マジか。お前が成功したの初めてみたわ」
「水野さん、嫌ならはっきり言うてくださいね?僕らも味方しますから」
「酷いわ二人とも!!」

二人の台詞から彼が普段何をしてどんな結果なのか分かった気がする。
とりあえず立っているのもあれなので座り、志摩君の弁護と自己紹介を始めた。

『三輪君、心配してくれてありがとうございます。でも私は同じ塾生の人達と仲良くしたかったので、志摩君の誘いは嬉しかったですよ』
「そうなん?なら良かったですわ」
『……改めまして。私は水野ソラです。よろしくお願いします!』

私の次に自己紹介をしてくれたのは背が低い丸坊主が特徴の……

「僕は【三輪 子猫丸】いいます。よろしゅう水野さん」

なんとも笑顔が可愛い癒し系男子だと思ったが、男の人に対して失礼だと思い心の奥にしまっておいた。
三輪君の次は鶏のような頭をした筋肉質の……

「俺は【勝呂 竜士】。授業で分からんことあったら言うてや。少しは役に立てる思うからな」

彼の優秀さは知っていたのでとてもありがたい。
皆の紹介が終わり、弁当を食べながら雑談をしていた。
強面の勝呂君は意外にも話しやすい人で常識人だ。

『では、三人は家族のようなものなんですね』
「ええ。小さい頃からずっと一緒でしたからね」

京都の由緒あるお寺出身の三人は幼い頃からの幼馴染みだそうだ。
まるで私達のようだと思っていたら勝呂君が間をおいてから聞いてきた。

「……そういや水野は奥村と杜山さんとは前からの知り合いやったんか?」
『はい。しえみとは友達になったばかりで、燐とは幼馴染みで友人です。もちろんその弟の奥村先生も』

塾の初日の様子からして知り合いだとは思っていたようで三輪君も「いつも一緒やから僕らみたいですよね」と言っていた。
次に質問をしたのは志摩君だ。

「なあなあ、ソラちゃんが男子の制服着てるのって戦闘スタイルが原因言うてたけど、どんな戦いかたするん?」
『主に…体術ですね。移動の際も屋根づたいに跳んでいくこともありますから男子の方が楽なんですよね』

笑いながら話す私に志摩君はやたら嬉しそうに……徐々に興奮していく。

「つ、つまり……スカートだと中が見えてしまうと?……今からでも遅ーない。ソラちゃん、女子の制服に戻してや!世の男達のためにも!何より俺のために!」
『拒否します!』

落ち込む志摩君を放置し、勝呂君と三輪君が驚きの表情で質問してきた。
……こちらが自然な反応だ。

「屋根づたいに跳ぶって……ホンマか!?」
「……まるで忍者やね」
『ホンマですよ。私の趣味の1つが修行で小さい頃から鍛えてましたからね』

趣味が修行の女子高生……変わっていると思われても仕方がない。
そこへ復活した志摩君が加わり話は続いた。
その後、それぞれの教室に戻り私は塾への楽しみが増えたと喜んだ。

(あの三人となら……燐も仲良く出来そうですね)

最近の燐は慣れない学校生活に疲れているようなので、また今度にでも紹介してみようと思う。

授業が終わり燐と一緒に塾へ向かうため彼のいる教室に向かった。
教室に入るとこの見た目で皆の視線が集まったが気にしない。
……もう慣れた。
燐は眠っていたので体を揺さぶり起こす。

『燐、起きてください。授業はとっくに終わりましたよ』
「……んっ……あれ?ソラ?どうしたんだ?」
『……塾へ行きますよ』

まだ寝ぼけている燐に缶コーヒーを渡し、鍵を使い塾へ向かった。
私達がコーヒーを飲みながら歩いていると後ろからしえみが走りやってくる。

「燐!ソラちゃん!こんにちは!」
「おう!いつも元気だなお前」
『こんにちは。しえみの元気な姿は……笑顔は私の癒しですよ……いや本当に』
「そ、そうかな?」

しみじみと言った私にしえみは照れながら、燐はなんとも言えない顔でまたもや……

「……孫を想う【ジジイ】かよ」
『……………』

燐の頬を笑顔で引っ張り真顔で返す。


『せめて【ババア】にしてください。私は女です』
「「気にするのそこ!?」」

仲良く二人で突っ込んでくれた。
ボケにツッコミしてくれるのはとても嬉しかったりする。

そんな三人を少し離れた場所で見ている京都組の三人。
特に勝呂君は燐を眉間にシワを寄せながら見ていたようだ。




〜続く〜

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