6…燐と雪と可愛い女の子

理事長から祓魔師の説明と塾に関すること等を説明して貰った私はあるお願いをした。

『戦うのであれば、制服を男子の物に変えたいのでお願いします』

その時の理事長の凄く残念そうな顔は私の携帯のフォルダに保存してある。
渋々ながらもその日の内に用意して貰えたのでお礼に昼に食べる予定だった手作りクッキーをあげたら喜んでくれた。

「そうだ!このまま奥村兄弟の所に行きませんか?先に説明しといた方が良いでしょうから」
『そうですね。案内をお願いします』

葬式の日以来、二人には会っていない。
燐は八郎さんが落ち着いたら話をしに行くと言っていたから学園にいるなんて思いもしなかった。
雪も特進科で、私とは離れた教室で勉強していてまだ一度も会えていないのだ。
また三人で過ごせるかもしれないのが嬉しくて仕方がない。

『……二人とも驚くでしょうね』
「ククク。楽しみですね」

嬉しそうに理事長が案内をしてくれた場所は見た目がボロの旧男子寮だった。
ちなみに貸し切り状態だと聞いた私はこの寮に入りたいと理事長に頼んでみたら即OK。
これを喜ばずにいられようか!

『理事長ありがとうごさいます!今の私には光輝いて見えますよ!』
「ハッハッハッ!ようやく私の素晴らしさが分かりましたか。なんなら【理事長】ではなく【メフィストお兄ちゃん】と呼んでも構いませんよ!」
『HAHAHAHA!分かりました。では、遠慮なく【メフィさん】と呼ばせていただきます!』

玄関前で騒いでいた私達は後ろから呆然とこちらを見ている人達に気づかなかった。

「……な、なんでメフィストとソラが仲良くこんなとこにいんだ!?」

最初に叫んだのは燐だった。
振り向いた私達を驚いた表情で燐と雪は見ていて、そんな二人にメフィさんは愉しげに説明を始める。

「明日からこちらの水野ソラさんも祓魔塾に通うことになりましたので、ご挨拶に伺ったのです」
「「はあっ!?」」

流石は双子……息がピッタリだ。
そして、私を見るのも同時だった。
二人が何かを言う前にノンストップで説明を始める……その方が話は先に進むからね。

『悪魔についてや祓魔師がどんな職か等は説明していただき理解した上でここにいますのでご安心ください!』
「あと、こちらの寮にソラさんも入りますので仲良くしてくださいネ」

私とメフィさんの発言に固まる双子の兄弟。
先に復活したのは弟の雪でメフィさんに食い付くように質問を連続投球し始め、燐も復活してすぐに同じことをしていた。

(……メフィさん頑張って下さい)

心の中で応援していると後ろから可愛い声の主が私に挨拶をしてきた。

「……ぁ…あ、あの!こ、ここんにちは!」
『…!……こんにちは』

声のする方を見ると和服姿でショートボブの可愛い女の子が頬を赤らめ立っていた。
明らかに緊張している彼女は詰まりながらも私に自己紹介をしてくれている。
何この子……メラ可愛い!

「わ、わた……私…【杜山しえみ】!その……ょ、よろしくね!」
『〜〜っ!』

あまりの可愛さに萌え死にそうなのを堪えた私は彼女に手を差し出し自己紹介をした。
もちろん、初対面なので心の中だけで萌える事にして表は平常心を装っている。

『私は水野ソラ。燐や雪とは幼馴染みで友人です……こちらこそ宜しくお願いします!』
「!!……うん!」

両手で握り返してくれた彼女は本当に嬉しいのだろう。
満面の笑顔で頷いた彼女はとても可愛いかった。
今日はなんて良い日なんだ。

「えっと……よ、良かったら……名前で…ソラちゃんって呼んでもいい?」
『OKです!私も【しえみ】って呼んでも良いですか?』
「うん!!……な、なんか友達みたいで嬉しいな」
『?……みたいではなく、既に友達では?私はそのつもりなのですが……』

先程の流れで新しい友達が出来たと思ったのだが……違ったのかもしれない。
あれ?私ってイタイ人?
そんなことを考えている間にしえみは放心状態から一気に真っ赤になり慌て出した。

「友達?………ぁ…わわっ!と、友達!どうしよう私……初めて友達が出来た!燐!雪ちゃん!私、友達が出来たよ!」
『……おぅふ』

喜びのあまり燐達に報告したしえみ。
本当に嬉しそうな彼女を見ていると私まで嬉しくなるし、無邪気な姿が可愛くて仕方がない。
そして……勘違いではなくて本当に良かったと内心ホッとした。

「おい……本当にいいのか?」
『!』

話しかけてきたのは不安そうな顔をした燐だった。
葬式の時とは違い顔色も良く、安心した私はちゃんと返事を返す。

『なんだか久し振りに感じますね……私なら大丈夫ですよ。決めたからには中途半端な事はしません』
「……そっか」
『少なくとも燐よりは強いから大丈夫ですよ!HAHAHA!』

冗談で言ったのに「なら今から勝負しろ!」と言って追いかけてきた。
それをしえみとメフィさんは笑いながら、雪は呆れた顔をして見ている。




その後、荷物を旧男子寮に運ぶのを皆が手伝ってくれたので助かった。
しえみも一緒に晩御飯を食べ、明日の塾でまた会おうと約束して別れ部屋に戻る。
窓から見える景色は街明かりで綺麗に輝き、街並みが独特なこともあり幻想的だ。

(………お父さんには落ち着いてから…もっとよく知ってから話しましょうか)








明日から本当に新しい生活が始まる。





〜続く〜


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