光闇繋者
義兄弟との再会
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妖怪の総大将と呼ばれ、いたずら好きで、人の嫌がることばかりする妖怪。

それが、ぬらりひょん。

それがリクオの、おじいちゃん。



義兄弟との再会



 学校から帰ってきたら、総大将に「また学校なんぞに行っとったんか」と言われてしまった。それに異を唱えたのはリッくんだ。リッくんは中学生だから当たり前だと主張するが、総大将はリッくんに家業を継いでほしいのか、「あのなあ…お前はワシの孫。妖怪一家を継き、悪の限りをつくす男にならんか!!」と言っている。それを一言、「断る」で一蹴するリッくん。少しばかり黒いオーラを出しているのは気のせいではないだろう。
 廊下を歩いて行くと小妖怪がいて、揃って挨拶をすると返事が返ってくるのだが、ちょっとばかり違和感があるのは、菓子をつまんで……否、がっついているからだろう。さっきのも相俟ってか、リッくんの顔に怒りが出ていた。


「………何その高級菓子………」

「え」

「じーちゃん!!」

「リッくん!」

「またどっかから盗んだの!? 悪行はほどほどにって言ってるじゃないか!」


 リッくんは総大将に掴みかかる。
 ああ、こわいこわい。


「人間に迷惑かけたらぼくが白い目で見られるんだからね!」


 総大将の服を掴んだままのリクオに小妖怪が言った。


「違いますよ、リクオ様…。おみやげですよ。久々に……鴆一派の鴆様が来てらっしゃるんですよ」


 どうやら、お客人――鴆の手土産らしい。





 鴆の待つ部屋に行くと、カコーンと鹿威しが鳴った。


「お久しゅうございます! 鴆でございます!」

「ぜ…鴆さん!」

「あれま」

「お、彼誰もいたのか」

「すぐに席外すよ。挨拶に来ただけだから」


 じゃ、また、と声をかけて部屋を出た。着替えて垂れ桜の木に座る。お気に入りのように思われるが一番のお気に入りは屋根の上だ。空を見上げていると、牛鬼が寄ってきた。


「一緒にはいないのか。彼誰」

「……どういう意味?」

「よく一緒にいるだろう」

「常に共にいるわけではないよ。わかってるでしょうに」


 ――牛鬼。『牛の歩み』と呼ばれる思慮深さを持つ奴良組の幹部。そして、組を思う気持ちは奴良組随一。初代からいるからか、今の奴良組を復興させたいと願う気持ちもまた強い。


「死ねぇいぃ、このうつけがーー!! いつのまにそんな軟弱になりおったー!!」


 鴆の怒りの叫び声が聞こえた。


「何か問題が起きたようだね」

「行かないのか?」

「リクオの問題だ。わたしには関係ないな」


 私はさっと垂れ桜から移動した。





 夜、リッくんとカラス天狗が朧車に乗って鴆一派のとこに行くって言うから着いていくことにした。手土産に妖銘酒を持っていくって言うから、酒を飲みながら話をするのもいいかもしれない。
 そう思っていたのに、いざ行ったら火事だった。リッくんがそのまま突っ込むように言って、わたしたちは火事の中に突撃した。
 鴆のもとに行くと、刀を持って蛇大夫と対峙していた。


「カラス天狗…こいつらは…」

「わかりませんが……鴆一派の幹部だったと思います」

「くく…丁度いい…。このウツケ者の反対派は幹部にも多いときく…ぬらりひょんの孫…。殺してオレのハクがつくってもんだ!!」


 蛇大夫がリクオに襲い掛かる。


「許せねぇ」

「ど…どけ!? リクオ!! お前に何が出来る!?」

「下がってろ。彼誰、手ェ出すな」

「……はいよ。小生の出番は無しか」

「ああ」


 彼は長ドスで蛇大夫を縦に真っ二つにした。血飛沫が辺りに散り。悲鳴混じりに蛇大夫についていた妖怪が逃げていく。大将がやられたようなもんだからそんなものか、と思う。
 鴆がリクオを見遣る。


「…………あんた…誰だよ…?」

「リクオだよ」


 彼を見て答えた。


「また…覚醒されたのですか…」

「リクオ? リクオだって!?」

「よう鴆、この姿で会うのは初めてだな」


 リクオは自分の血のことを説明した。もちろん、バスのことも含めて。


「………なるほど…。四分の一は…妖怪だってーのか…。なっさけねぇ、こっちはれっきとした妖怪だってのに。結局…足手まといになっちまってる…」


 鴆は吐血はしなかったが、噎せた。


「なあ、リクオ、今のオメエなら…継げんじゃねぇのか? 三代目。オレが死ぬ前に…晴れ姿見せちゃあくれねぇか」


 リクオは静かに盃に酒を注ぐ。わたしは彼らを少し離れたところで見ているだけだ。


「飲むかい」

「……いいねぇ……。オレに…酒をついでくれんのかい。ついでに…あんたの盃もくれよ。オレは…正式にあんたな下僕になりてぇ! どーせ死ぬなら、アンタと…本当の義兄弟にさせてくれ。親の代じゃねぇ…直接あんたから」

「いいぜ。鴆は弱ぇ妖怪だかんな。オレが守ってやるよ」

「ハハハ…。はっきり言うな…夜のリクオは…」


 盃を交わす光景をわたしは羨ましくなった。





 おぼろ車の中、リクオは聞いた。


「あとどれほどの盃を交わせば…妖怪どもに認められたことになる?」

「え?」

「オレは三代目を継ぐぜ」


 酒の入った深紅の盃が片手にはあった。


「なぁ…そうだ、さっきの画図。最高幹部って………何人いるんだい?」


その声は、わたしにとても、心地好く響いた。それはとても静かな夜だった。
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