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 俺の中に大量の熱液をぶちまけた課長のモノが、何度かぴくぴくと震えながら残り弾を吐き出して徐々にその身を落ち着かせていく。

「ぁ……あ、んッ」

 鬼原課長がまだ熱の残る身体をそっと俺の上に重ね、頬や顎、唇についばむような優しいキスを落としてきて、心地好い重みに俺はうっとりと目を閉じ、大きなその背中に手を回して抱き付いた。

「課長……」
「……すまない。余裕がなくて……そのまま中に、二度も」

 俺の首筋に顔を埋めて申し訳なさそうに謝る上司が、何だかいたずらを咎められた大型犬のように思えてしまって。俺は思わず笑って少し硬めの短い髪をそっと撫でてみた。

「身体は大丈夫か」
「大丈夫、かどうかは、ちょっと」

 萎えて勢いを失ったとはいえ、俺のモノとは比べものにならないほど立派な課長のペニスがまだ体内に埋められたままのこの状態では、大丈夫なのか何なのかもよく分からない。

「ああ、悪かった」
「んッ……ぁ」

 まだ自身を挿入したままだったことに気付いた課長が、精液まみれの恥ずかしい穴からソレを引き抜いて上体を起こしたその瞬間。
 俺の視界には、とんでもないものが飛び込んできた。

「いちろ、だいじょうぶ?」
「……!?」
「おみずのむ?」
「!?」
「汗ふき用のふんどし、いる?」

 小さな羽根をぱたぱたと羽ばたかせて、俺と課長の間に、何故かちんまりとしたイガグリ頭のやんちゃ坊主が。
 大きな目をくりくりさせて、心配そうに俺を見下ろして浮かんでいる。

「おおお、お前……な、何してんの」

 大人しく家に帰ったんじゃなかったのか。
 何でこんなところにいるんだ、っていうか、いつからここにいたんだ。
 頭に浮かんだ疑問は、そのまま口から飛び出してきた。

「帰ったんじゃなかったのか!」
「だって、いちろに見せたいものがあったんだもん」
「いつからこの部屋にいたんだよ!」
「んと、かちょーさんが『今のはのーかうんとだ』っていったあたりから」
「そっ、そんなに前から!?」

 キリッとした顔をつくって全然似ていない鬼原課長の真似をするアニキに、俺は一瞬で全身の血が沸騰するほど熱くなったあとで血の気が引くという混乱状態に陥っていた。

 鬼原課長の不本意な暴発のあたりからの一連の行為を、こんなちびっ子に見せてしまった。
 あんな姿やこんな姿を見られた羞恥以前に、子供の教育上よろしくないモノをお見せしてしまった申し訳なさが半端ない。

 ぐるぐると忙しく動揺して何も言えない俺の目には、ちびっこ坊主の向こう側で、俺以上に衝撃を受けて固まる男前上司の顔が映っていた。

「田中……これは、一体」
「ええと、ええと、あの、これは……何というか」

 普段から滅多なことでは動じずほとんど表情を変えない鬼原課長は、こんな時でもそれほど顔色を変えたりはしないけど、目の前のちびっ子の存在に驚いて状況を理解できずにいるのは間違いない。

 このちびっ子妖精の存在をどう説明していいのか。
 最大の窮地に立たされた俺を他所に、アニキは褌の中をもぞもぞと探り、何やら桃の形の小さな紙を取り出して俺にぷりぷりのケツを向け、鬼原課長に深々と頭を下げて桃型のカードをササッと差し出した。

「あ、わたくし、愛と正義の褌妖精アニキちゃんともうしますっ。よろしくおねがいします」

 こいつ……毎日ネクタイを締めて嬉しそうに出勤していたと思ったら、いつの間にか自分の名刺まで作っていたのか。
 しかもビジネスマンっぽく名刺を渡せるのがよっぽど嬉しいのか、俺の耳にまでふんふんという鼻息の音が聞こえている。

 営業の魂が細胞レベルにまで浸透している仕事の鬼の上司は、ここまで動揺していても差し出された名刺には身体が勝手に反応してしまうらしい。
 アニキの手から課長の手に渡ると、ちんまりとした豆粒のような名刺は柔らかい光を放って、普通の名刺サイズへと大きさを変える。
 可愛らしい薄ピンク色のそれをしげしげと見つめて、課長はハッと顔を上げた。

「申し訳ありません、あいにく名刺を切らしておりまして……」

 名刺を切らすも何も、俺たち今、股間丸出しの全裸ですよ課長。
 表情にはまったく分からないけど、この状況で謎のちびっ子に普通の応対をしているあたりが鬼原課長の静かな動揺っぷりを表しているのかもしれない。
 
 一方のアニキはというと、きちんと名刺を受け取ってもらえたことに大満足した様子で、小さな桃のようなケツをぷりぷりと揺らして嬉しそうに羽根をぱたぱたさせていた。

「きはらかちょーさんのことはちゃんと知ってますから! お名刺はおかまいなく」
「知って……?」
「いちろがいつもおせわになってますっ」

 もう一度深々と頭を下げて、俺の方にぷりっとしたケツを突き出すアニキに、鬼原課長も状況が理解できていないはずなのに硬直した顔のまま何となく頭を下げて「いや、こちらこそ」なんて答えてしまっている。

 この状況をどう収拾していいのか分からず、とりあえず俺は、目の前でぷりぷりと揺れているちびっ子妖精のケツを指でつついてやった。


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