8


 やっぱり俺は、あさはかだったのかもしれない。

 男同士でどうやって繋がるかという漠然とした知識はあっても、それがどういうことなのか、今思えば具体的には理解できていなかった。
 ケツにモノを突っ込まれたって気持ちよくはないだろうけど、それで鬼原課長と気持ちを確かめ合えるなら我慢できる、くらいに思っていたのだ。

 それなのに。

「や……っ、ん! かちょ、そこ……も、やだ……」
「まだだ。もう少し慣らさないとキツいはずだ」
「んんッ! ぐりぐりしちゃ、ダメ……っ!」

 狭い肉壁の奥に突き入れられた長い指が、勃ち上がったペニスの裏側を押し上げるように刺激するのに合わせて、びくんっと腰が跳ね上がる。
 身体の内側からじわじわと湧き上がるもどかしい快感の波に、完全に勢いを取り戻した俺のモノはいやらしい蜜をたらたらと垂らして幹を濡らし、赤く張り詰めたその身を震わせていた。

「ココなんだな」
「い、あぁあッ! や、それ、おかしくなっちゃ、う……」
「押してやるたびに、ケツが指を締め付けてくる」
「っ、言わないで……!」

 楽しんでいるのか真面目なのか、鬼原課長は俺の身体を開発しながらも淡々とした解説を口にするのを止めてくれず、絶妙に俺の羞恥心を煽りたてる。

「乳首も……感じるようになってきたみたいだな」
「んんッ! 噛んじゃだめ……っ、やッ! はぁ……ん」

 何度も舐められたり歯を立てられたりして執拗に弄られているうちに、乳首までもが快感を紡ぎだす敏感なポイントに変えられてしまっていた。

 いつイッてもおかしくない状態なのにギリギリのところで射精できないのは、鬼原課長の意地悪な手が勃起したモノの根元を握って熱液の放出をせき止めてしまっているから。

「あ、ぁんっ、や……っ」

 身体の奥で暴れまわる指先が、今何本挿し入れられているのかも分からない。
 ただ、課長の指が動くたびに今までに感じたことがない危険な刺激が下半身を熱くして、ぬちゅぬちゅと響く恥ずかしい水音に羞恥心を煽られつつも、俺は抵抗もできずにむしろねだるように腰を揺らし、恥ずかしい声を零し続けた。

 身体の奥が熱い。
 もっと、指より太くて硬いモノで俺をいっぱいにして、奥をかき乱してほしい。

「もう、やだぁ……かちょう、も、いれて……ください」
「準備が不十分だとお前の身体に負担がかかる」
「痛く、ても、いいから……早くっ、俺だけ気持ちイイのは、イヤです」
「っ!」

 この恥ずかしい一言は、効果があったらしい。

 自我を失ってしまいそうな快感の波に呑まれながら、涙に潤んだ目で大好きな男前上司の目を見つめ、筋肉に覆われた背中に手を回して小さな声で囁くと。
 俺なりの精いっぱいのおねだりに、鬼原課長の股間にそびえ立っていた極太のペニスがぶるりと震えて反り返り、微かな舌打ちが耳に届いた頃には、体内に埋め込まれていた指が引き抜かれ、俺の身体は四つん這いの状態にひっくり返されて、鬼原課長に向けてお尻を高く突き出すような何とも恥ずかしい格好にされていた。

「最高の眺めだ」
「っ、かちょう……いじわる!」
「怒るな。これが一番負担の少ない体勢なんだ」

 鬼原課長の前で、ケツ穴丸出しの状態で四つん這いになっている自分という状況を理解した瞬間、羞恥に全身の血が熱くなる。

 気まずさのあまりもぞもぞと身体を起こそうとした俺の身体を抑え込むように上からぴったりと身体を重ね、鬼原課長は熱く昂ぶったソレを、散々慣らされて熟れきった小さな穴にあてがってきた。

「……っ!」
「挿れるぞ。力を抜いて息を吐け」
「え!?」
「挿れてもいいんだろう?」
「は、はい!」

 力を抜け、と言われても。
 明らかに指とは質量の違うソレを突き付けられた状態で力を抜けと言われても無理な話だ。

 俺がガチガチに緊張して固まっている様子を察知したのか、課長は片腕を俺の身体に回し、熱い大きな手の平を肌の上に這わせて脇腹から胸までをそっと撫で上げてきた。

「ん……」
「痛くないと言ったら多分嘘になる」

 それはそうだろう。
 鬼原課長のソレは、どう考えても規格外サイズのボリューム感だ。

「が、俺はお前の中に入りたい」
「きはら課長」

 後ろから密着して俺を抱きしめる身体が熱くて、大きな鼓動がダイレクトに伝わってくる。

「好きだ、田中」
「!」
「ノンケのお前のことは諦めるつもりだったが……本当はずっと、こうしたいと思っていた」

 男前上司は、こんなときにもやっぱり男前で、ずるい。

 切ない響きを含んだ甘い囁きに、俺が全身の力を抜いた瞬間。

「――あぁッ、ぁ……うぁああッ!」

 発情した獣は、圧倒的な質量をもった雄の象徴を狭い肉壁の奥へと打ち込んできたのだった。

「……は、ぁ、あ……おっきくて、……くるし」
「いい子だ……もう少し、我慢してくれ」
「……ん、ん」

 身体が二つに裂けてしまうんじゃないかという痛みに、溢れ出した涙が頬を伝っていく。
 まだ完全には収まりきらない巨大なペニスを少しずつ埋め込みながら、鬼原課長は、後ろから回した手で優しく涙を拭きとってくれた。



(*)prev next(#)
back(0)


(77/89)
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -