7


 たちこめる湯煙のなか、バスルームにツンと青臭い雄臭が漂う。

「あ……の、俺……」

 出すモノを出してしまうと、今までの自分の痴態がよみがえってただただ恥ずかしくなってくる。

 自分だけ気持ち良くなってあっさりイッてしまってものの、一緒に握られた課長のモノはまだ勢いを保ったまま脈打っていることに気付いて、俺も何かした方がいいのだろうかと伺うように鬼原課長の顔を見上げると、男前上司は表情はまったく変えずに下半身のモノを露骨に膨張させた。

「……舐めたりとか、した方がいいですか」
「そんなサービスはしなくていい」
「でも」

 表情ひとつ変えずに俺の申し出を一蹴しながらも、下半身だけは正直に反応を見せてくれるのが何だかちょっと嬉しい。
 というか、表情はあまり変わっていないけど、耳の先だけは少し赤くなっているような。

 真っ赤に充血してそそり立つ赤黒い極太のソレと鬼原課長の顔とを見比べていると、さすがに恥ずかしくなったのか、鬼原課長は俺の目をふさぐように瞼にキスを落として、流しっぱなしだったシャワーを止めた。

「暴走して初心者のお前に無理をさせないように、これでも我慢しているんだ。煽るな」

 そう言ってガッシリと逞しい腕を俺の腰に回すと。

「うおっ!?」

 鬼原課長はまたしても軽々と俺の身体を肩に担ぎ上げ、米俵を運ぶような体勢でバスルームを後にし、身体も拭かずに寝室に向かって歩き始めた。

「ちょ、課長! 自分で歩けますから下ろしてください!」
「すぐにベッドの上に下ろしてやる」
「この体勢、恥ずかしいです!」

 やや速足になっているところから鬼原課長の余裕のなさが窺えるのはいいんだけど、この運び方……もう少しどうにかならないものなんだろうか。
 剥き出しのケツにひんやりとした風が当たっていたたまれない気持ちになるし、何より、粗末な俺のモノが課長の歩く振動に合わせてぷるんぷるん揺れてしまうのがひたすら恥ずかしい。
 まあ、全裸でお姫さま抱っこなんてされてしまったその日には恥ずかしさのレベルはこんなものでは済まなかっただろうから、米俵担ぎでまだ助かったと言えるのかもしれないけど。

 大きな背中をぺちぺち叩く俺の抗議をあっさり流して寝室にたどり着いた課長は、ベッドの前で足を止めると、それまで米俵のように担いでいた俺のケツに手を回して、壊れ物を扱うようにそっとシーツの上に下ろしてくれた。

「きはら課長……」

 濡れたままの身体がひんやりと冷たいシーツに触れたものの、熱が冷める間もなく、頬や首筋に優しいキスの雨が降ってくる。

「まだ、夢じゃないかと疑ってしまう」
「ん、ぁ……っ」
「こうしてお前の身体に触れることができる日が来るなんて、思わなかった」

 熱い吐息とともに心地よい囁き声に鼓膜をくすぐられて、唇からは甘い声が零れ落ちる。

「お前は本当に可愛いな、田中」
「あの、あんまり見ないでください」
「元々そそられるケツだとは思っていたが、乳首も色が薄くて小さくて綺麗だし、元気なペニスまでちょうどいいサイズで俺好みだ」
「そういう解説をされると恥ずかしくて気を失いそうなんですけど」

 自分の乳首や粗末なムスコが課長の目にどう映っているか、気にならない訳じゃないけど、言葉にされると恥ずかしすぎる。
 視線に反応するように、先ほどの射精で大人しくなっていた俺のペニスはまたしてもむくむくと成長し始めていた。

「元気だな」
「恥ずかしいです」

 これは本当に恥ずかしい。
 まだ濡れている肩をぺちっと叩いて口を尖らせると、男前上司は笑って、とびっきり甘いキスで俺の唇をふさいでくれた。

「んん……ふ、ぁ」

 何度も角度を変え、熱い舌を絡めて俺に快感だけを与えながら、そろそろと伸びてきた手が足の間を探り、尻肉の間を割って恥ずかしい部分にピンポイントで触れてくる。

「つめたい……っ」
「挿入用のジェルだ。すぐに温かくなる」
「……いつの間に」

 あまりに手際が良過ぎるところから鬼原課長の経験豊富さが窺えて、つい唇を尖らせてしまうと、俺の考えていることが手に取るように分かってしまったのか、鬼原課長は「こんな時にヤキモチを焼かれても嬉しいだけだ」と困ったように笑ってもう一度キスを落とした。

 困り顔も男前なんだから、本当にこの上司はズルい。
 一緒にいる時間が増えるたびにどんどん好きになって、どうしたらいいのか分からなくなってしまう。

「――っ、あ!」

 色気の滲む精悍な顔に見惚れているうちに、小さな入口を探り当てた指先はジェルを延ばすようにクリクリとその部分を撫で回し、何の合図もなく侵入を開始してきた。

「痛いか?」
「い、たくはないですけど、何か……変な感じが」
「後からもっとデカいモノを挿れるんだ。慣らすぞ、我慢しろ」

 その“もっとデカいモノ”は、さっきからずっとお預け状態で我慢汁を滴らせ、課長の股間でその極太の赤黒い砲身を反り返らせている。

 本当にそんなモノが俺の中に入るのかは甚だ疑問だったけど、同じ男同士、今課長がどれだけ辛い状態で我慢の限界に挑んでいるのかはよく分かるので、俺はとにかく課長を信じて身を任せることにした。



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