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 不自由な体勢で助手席から手を伸ばし、ゆっくりとスラックスの前を寛げて濃紺のボクサーパンツの中から佐竹の分身を取り出す。

 窮屈な下着から解放された逞しいペニスは、既に十分過ぎる程育って硬く反り返り、雪矢は思わず喉を鳴らした。

 運転席に座る佐竹の姿はもう、見慣れている。
 骨張った手をステアリングに軽く乗せる男の精悍な横顔が、雪矢は好きなのだ。

 そんな車の中で佐竹が股間のモノを猛々しく勃起させているという非日常的なシチュエーションに、興奮しない訳がなかった。
 と同時に、いつも散々佐竹に可愛がられて鳴かされている仕返しをしてやろうという悪戯心もむくむくと雪矢の中に沸き上がってくる。

「……車の中なのに、こんなに大きくしちゃうなんて」

 見事に張り出したカリ首を細い指で軽く突いて、そのまま太い幹に浮き出た血管を辿るように撫で下ろし、雪矢は普段佐竹が自分にそうするように、意地悪な言葉を続けた。

「恥ずかしい佐竹さんですね」
「……」

 こういった言葉責めは、佐竹の得意技だ。

 雪矢を可愛がる時の佐竹は嬉々としていやらしい言葉を並べ、羞恥と快感で雪矢をドロドロに溶かしてしまう。

 『いやらしい奴め』『お前のココは俺のモノが余程お気に入りらしいな』『もうこんなに濡らしているのか……淫乱』など。
 佐竹のオヤジ臭い言葉責めのバリエーションは豊富で、下半身に響く低音の美声で囁かれるだけで雪矢の身体は反応し、達してしまいそうになるのだ。

 普段雪矢が感じさせられている恥ずかしさの半分でも佐竹が感じればいいと、我ながら上出来の言葉責めに満足した雪矢が渾身のドヤ顔を運転席の恋人に向けると。
 整った男前のヤクザ顔を固まらせていた佐竹は、耐え切れなくなったかのように顔を背けて吹き出し、肩を震わせて笑い始めた。

「な、何で笑うんですか!?」
「お前が笑わせるからだろうが」
「だって、佐竹さんがいつも俺に言っている言葉ですよ!」

 雪矢は佐竹に「恥ずかしい奴だな」と囁かれるだけで、下半身を直撃する甘い痺れに陥落してどうしようもなくなるのに、佐竹にはまったく効かないどころか、笑われてしまうのは不本意だ。

「言葉だけで俺を感じさせるつもりなら、まだまだ練習が必要だ」

 そう言って、雪矢の頭を軽く叩き、佐竹はドライバーシートを後ろに移動させ、無理な体勢から軽々と雪矢の身体を抱え上げ、向かい合う形で自分の膝の上に乗せてしまった。

「きついか?」
「大丈夫です」

 佐竹の車は車内が広々としているため、こうして運転席を後方に移動してしまえば、男二人が向かい合って座ってもそれほど窮屈な感じはしない。

 ただ、ピッタリと密着した腰の間で、佐竹のペニスがまだ硬度を保ったまま逞しく勃起していることが雪矢には気になって仕方なかった。

「雪矢」
「は、はいっ」
「初心者マークのお前が、焦る必要はない」
「……あっ」

 腰を抱き寄せた手が、シャツの間に差し込まれ、雪矢の白い肌の感触を確かめながらゆっくりと胸に上がっていく。

 ピンと立った乳首を摘み上げられて、雪矢は甘い吐息を零し、背を反らせた。

「大人の楽しみ方も、誘い方も」
「ん、……ッ」
「これから俺が時間をかけてじっくり教えてやる」
「佐竹さん、……手、だめっ」
「この先何回でも、お前に俺のやり方を刻み込んでやる」

 密着して向かい合った状態で、わざと乱暴に胸の突起をこね回す意地悪な手に、雪矢の身体はどんどん熱くなり、気付けば細い腰は、佐竹のモノに擦りつけるように淫らに揺れていた。

「や、ぁ……っ」

 シャツをめくり上げられ、露になった突起に荒々しくしゃぶりつかれて、それだけでもう、雪矢のペニスは窮屈な下着の中で張り詰め、先端に蜜を滲ませていた。

「どうした? こんな場所で乳首を出して、いつもより感じているのか」

 囁きかけられる低音の美声は、甘く優しく、雪矢の身体を溶かしていく。

「違……、乳首は、佐竹さんがっ」
「その割には喜んで腰を揺らしているだろうが」
「意地、悪!」
「エロい乳首尖らせやがって」

 本来はこんな場所で、こんなことをしてはいけないのだ。
 薄いガラス窓一枚隔てた外には木々が立ち並び、茂みを越えた向こうに続く道を時折車が通過していく音が聞こえる。

「――恥ずかしい奴だな」
「んんッ!」

 低い笑い声に鼓膜をくすぐられるのとほぼ同時に、乳首に甘く歯を立てられ、雪矢は細い身体をビクビクと震わせて佐竹にしがみついた。



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