6
囁くバリトンに切羽詰まった響きを感じて、細い身体を抱き上げる野獣の鋭い瞳を見つめると、獣は雪矢に襲い掛かるようにして唇を乱暴に塞いできた。
「――ん、んッ!」
今さっきまで自分のモノを舐めていた口にキスをすることに抵抗がないのか、唇の間から差し込まれた舌は咥内をねっとりと嬲り、雪矢の身体に灯り始めていた快感の火を煽っていく。
はだけたバスローブの下から、元気よく勃ち上がった薄ピンク色のペニスが覗いて、雪矢は何とか佐竹の腕から逃れて股間を隠そうと身をよじった。
「ぷは、あっ、はぁっ」
「隠すんじゃねえよ、俺のを舐めて感じたんだろ」
「またそうやって、オヤジくさいことを……あぁッ!」
憎まれ口を叩いた瞬間、足の間に伸びてきた手が雪矢の雄の弱点をキュッと握る。
怒らせてしまったのかと恐る恐る佐竹の顔を窺った雪矢は、すぐ目の前にある精悍な雄の顔を見つめたまま、動けなくなった。
いつもは鋭い眼光を放って周りを圧倒する瞳が、その厳しさを和らげ、愛おしそうに雪矢を見つめていたのだ。
「佐竹さん……」
「お前に触れていると、俺はどうしようもねえエロオヤジになっちまう」
佐竹のセックスがエロオヤジ並にねちっこいのは雪矢のせいではなく、元からなのではないかという気がする。
――が、膝の上に抱え上げられて、勃起したペニスを握られた状態でそこにツッコミを入れる勇気は雪矢にはなかった。
夜の街を生きるトイチの金貸しが、こんなに優しい顔を隠していたのだろうか。
佐竹の本心が、見えそうで見えない。
熱を孕んだ視線に反応して雪矢の身体が熱くなると同時に、身体を支えていた逞しい腕は移動して、大きな手が雪矢の尻を撫で回し始めていた。
「高田のことは、俺が忘れさせてやる」
「え?」
「――お前は、俺のものだ」
「っ、あ……ッ!」
確かに、今どこにいるのかも分からず、連絡のない高田の安否は気になるが。
それ以上に、まるで雪矢が高田に恋心を抱いているかのような佐竹の言葉が気になる。
ただ、残念なことに、今の言葉の意味を問い返して自分は高田にはそういった好意を抱いていないと説明するだけの余裕は残されていなかった。
「佐竹さん、お尻……っ」
「自分で言っていたんだ、ケツを掘られる覚悟はあるんだろうが」
「あっ、指が……んんッ、やぁっ!」
「慣らさねえと俺のは入らねえんだよ」
一体いつの間に用意していたのだろう。
ジェル状の何かで濡らされた手がぷにぷにと柔らかい雪矢の尻肉を揉んで、その触り心地を確かめながら、双丘の谷間を辿って慎ましやかなすぼまりを指先で探り当てる。
「い、あぁ、ンッ!」
狭い肉壁を押し分けるように、骨張った指の先端が穴に突き入れられた瞬間、雪矢は大きな瞳を潤ませて佐竹の逞しい身体に縋り付いていた。
「ひ、……うッ、指、やだ……っ、やです……」
「大丈夫だ。怪我をさせるような真似はしねえから、我慢してろ」
「んん……!」
雪矢がこぼした切ない声に反応して、佐竹の股間でいきり立つ赤黒い巨根が更にググッと反り返る。
向かい合わせの体勢で膝に乗せられた雪矢がピッタリと身体を密着させると、バスローブの間から顔を出した小ぶりなペニスと佐竹の逞しいモノが触れ、互いの敏感な部分を刺激し合った。
「あ、あ……っ」
ジェルのぬめりを借りて奥深くまで侵入してきた指が体内を探る、今までに体験したことのない不思議な感覚。
「痛いか?」
「ん……っ、……あぁ、あッ!」
「雪矢……」
尻に指を入れられるなんてどう考えても気持ち悪いはずなのに、頬や唇に時折落とされる甘いキスと、あやすように耳元で名前を囁くバリトンが、雪矢の身体を溶かして快感以外のものを消し去ってしまう。
「はぁっ、ん、んッ!」
ゴツゴツと骨張った指で身体の奥の一点を押された瞬間、雪矢の腰が跳ね上がり、勃起した薄桃色のペニスが先端から蜜をこぼした。
「ここか」
「やぁあッ、……ソコ、やだぁ……っ」
雄の器官に直接触れられる訳でもないのに、射精を促されるような何とも言えないむずかゆい快感が走る。
雪矢は一際甘い声をあげて勃ち上がった雄茎を佐竹のソレに押し付けた。
「や、佐竹さん、駄目……!」
硬くなったペニスを擦り合わせて腰を揺らす度に、雪矢の濡れた前髪からは雫が滴り、鍛え上げられた佐竹の胸に落ちていく。
白いバスローブは完全にはだけて肩からずり落ち、赤く色付いた乳首が、ちょうど佐竹の眼前に晒されるような形で露になっていた。
「は、はぁ、あッ、あんッ」
「エロいな、雪矢。自分からチンポを擦りつけやがって……そんなにイイのか」
「違……あぁッ、おちんちん、むずむずする……っ」
「……」
慣れない快感に戸惑う雪矢が思わず口にした卑猥な単語に、佐竹の分身は一気に膨張し、身体の奥を探っていた指は動きを止めた。
(*)prev next(#)
back(0)
(42/94)