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根本をせき止められ、射精できないまま敏感な雄の器官を擦り続けられることが、こんなに辛いとは。
「もう……や、あぁあッ」
「こんなに濡らして、いやらしい奴め」
「やっ、先っぽ、やだ……! んんっ、変になる……あぁッ!」
「や、じゃねえだろ。ビンビンじゃねえか」
元々色素の薄い雪矢のペニスが佐竹の手の中で竿と先端部分を充血させて震え、雄臭い蜜を零して淡い茂みまでぐっしょりと濡らしているその光景はいやらしく、卑猥以外の何ものでもない。
こんな姿を佐竹に見られているのだと思うだけで恥ずかしいのに、雪矢の身体は与えられる快感に溺れ、壁の向こうに伍代が控えていることも忘れて嬌声をあげ続けていた。
「ひ、うッ……佐竹さん……」
「ん? どうした?」
「ねちっこくて、オヤジくさい……っ!」
「……」
細い身体をビクビクと震わせながら、雪矢は自分を追い上げるだけで射精を許してくれない男を責めた。
視界が涙で滲み、佐竹が今どんな顔をしているのかはっきりとは分からないが、精悍なその顔が雪矢の一言で一瞬引き攣ったような気もする。
「お願いです、もう……イカせて下さ、い」
ぽろぽろと涙を零しながら、雪矢はかすれた声で佐竹に懇願した。
借金の返済を待ってもらうために、身体払いの利子を受け入れたのは自分の意思だ。
それでも、自分だけが一方的に快感を与えられ、股間のモノをはしたなく勃起させて佐竹の前で淫乱ぶりをさらけ出しているこの状況にはどうしても堪えられない。
挿れるモノを挿れられて痛みに堪える方が“金のため”と割り切れる分、肉体的にはともかく、精神的には楽に思えた。
頭上で獣が小さく息を吐く音が聞こえ、それと同時に、根本を戒めていた手が離される。
「あッ……ん、んっ!」
「雪矢」
「あぁあッ、ン!」
雪矢の吐き出した蜜に濡れた手が、限界まで膨張した薄ピンク色の竿をリズミカルに扱き上げる。
身体を倒して覆いかぶさってきた男に、耳元で低く囁かれ、雪矢は細い腰を跳ね上げ、甘い声を零した。
「エロくて生意気で……お前は堪らなく可愛いな」
「や、ンッ……あ、出る……もう、イクっ」
せき止められ、下半身で渦巻いていた雄の欲望が沸き上がり、血管を浮かび上がらせたペニスがドクドクと脈打つ。
「あ、アッ、んんッ! イッちゃ、イク……やぁ、あぁあッ!」
「出せよ、たっぷり搾ってやる」
根本から先端まで、絶妙な力加減で扱き上げられて。
雪矢は身体を硬直させ、佐竹の手に握られたペニスを弾けさせた。
「――あ、あっ、あッ!」
真っ赤に充血した先端部分から、ピュクピュクと吐き出される白い液体。
雄の欲望を一滴残らず搾り出すように、佐竹の手は、小さな痙攣を繰り返すペニスを扱き続ける。
「んっ……ふ、あ……ッ」
射精直後で敏感になったモノに触れられ、雪矢は淫らに腰を揺らして快感から逃れようともがいた。
「雪矢」
甘いバリトンで再び名前を呼ばれて顔を上げた瞬間。至近距離にあった佐竹の顔に驚く隙もなく雪矢はその口に熱い唇を重ねられ、強引に舌をねじ込まれた。
「んん、んッ」
佐竹とキスをするのは、これで二回目だ。
口の中でうごめく舌が巧みに快感を引き出し、雪矢はいつの間にか大きな背中に手を回し、その逞しい身体にしがみついていた。
「ふっ……、は、はぁっ」
名残惜しげに唇を離し、佐竹が唾液に濡れた雪矢の唇をそっと指先で拭う。
借金のカタに雪矢の身体を弄ぶことが目的のはずなのに、その仕種は優しく、唇が離れてしまった瞬間寂しさを感じた自分に雪矢は戸惑わずにはいられなかった。
「何度でもイカせて楽しみたいところだが、今日はここまでだ」
「え……?」
予想外の言葉に、零れていた涙も止まり、思わず身体を起こして聞き返す。
雪矢が一度イッたところで、いよいよ佐竹がいきり立ったモノを挿れてくるのではないかと思って身構えていたが、どうやら佐竹はこれで終わるつもりらしい。
「腹を空かせた秘書がリビングで待っているからな。晩飯は食ったのか」
「いえ、まだ……」
「お前の分も一緒に頼むから、少し休んでいろ」
そういえば、リビングには伍代が控えていたのだ。
先程までのあの恥ずかしい声を全部聞かれていたのだと思うと、顔が一気に熱くなる。
真っ赤になって涙目で俯く雪矢を見て、佐竹は低く喉を震わせ、「いい子にしていろよ」と大きな手で汗ばんだ髪を撫でて部屋から出ていった。
「何で……最後までしなかったんだろう」
もっと痛くてひどいことをされると思っていたのに、結局身体を弄られて恥ずかしい思いをさせられ、焦らされた後にイカされただけで、雪矢が思っていたようなことはされなかった。
密着した下半身に感じた佐竹のペニスは猛々しく勃起し、熱く脈打っていたというのに。
少しずつ慣らしていく、と言っていたことを考えると、佐竹の計画では今日は雪矢をイカせるだけで十分だったのだろうか。
ベッドの上に一人残されて、ぼんやりと考えてはみたものの、雪矢が思い出すのは去り際に頭を撫でていった佐竹の手の温もりだけで、困惑は深まるばかりだった。
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