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気温が低くなってからは増加傾向にあった暖房機器関連の問い合わせも今日は少なく、コールセンターの派遣社員さんだけで対応できる案件ばかり。
技術部に急ぎで回さなければならない報告書も何とか作成を終えて早めに残業を切り上げた俺は、期待と緊張が入り交じった何とも言えない気持ちを胸に北山さんの家へと向かった。
「あ、いい匂い」
アパートの階段を上る前からふんわり漂ってくる美味しそうな香りに、もしかしたらまた北山さんが夕食にご馳走を用意してくれてたり……なんて。期待しながらチャイムを鳴らしたその時は、まだ気付いていなかったのだ。
プロが仕事以上に情熱を注いで作ってくれた豪華な料理を食べる暇もなく、自分が美味しく頂かれてしまうことになるなんて。
○●○
「き、たやまさん……っ」
「どうした、坊主?」
「やぁっ! ちくび、舐めながら喋らないで下さ……あ、あんッ」
食事の前にお風呂を借りて、幸せいっぱいで出てきたところを突然米俵のように担がれてベッドルームに運びこまれた俺は、昼間のキスよりももっと濃厚な大人のキスに酔っているうちにいつの間にか借り物のパジャマを剥かれて貧弱な身体を明かりの下に晒していた。
「もう、ソコ……やぁ、ああッ!」
たっぷりのローションで濡らした指が、チュクチュクといやらしい音をたててお尻の中で動き回る。
仰向けになって開かされた足の間に北山さんの身体が重ねられているというだけでも恥ずかしいのに、どんなに頼んでも北山さんは明かりを消してくれない。
全裸に剥かれているのは俺だけで、北山さんは上半身裸に部屋着のパンツ姿という違いも余計に恥ずかしいんだけど、多分これはわざとなんだろう。
「ん、ん、……あッ、あっ」
「エロいな、お前の乳首は」
「ひぁッ、ん」
さっきからずっと責められ続けている胸の突起は、唾液で光って、糖蜜でコーティングされた果物のように赤く色づいていた。
「やぁあっ、んッ」
小さな突起を器用に舐め回す舌がものすごくセクシーで、何だか俺の身体が美味しく料理されて北山さんに食べられているみたいだ。
「ココを舐められるのが好きなのか」
「や、もう、ダメですっ、ってば」
「ちょっと噛んだだけで、チンコから汁がこぼれてるぞ」
「ああぁッ!」
敏感になった乳首をコリッと甘噛みされた瞬間、痺れるような快感が広がって、股間で勃ち上がったペニスから透明の粘液が糸を引いて落ちていく。
トロトロにほぐされたお尻は熱くなって、中を探る指をいやらしい動きで締め付けていた。
「どうして……触ってくれないんですか」
丁寧にお尻をほぐしながら、北山さんが弄るのは何故か乳首だけ。
体内の敏感なポイントを刺激されて、感じやすい胸の突起を執拗に責められて、それなのに肝心な部分には指一本触れてもらえないもどかしさにおかしくなりそうで、俺は北山さんの逞しい腹筋に勃起したモノを擦りつけながら精一杯のおねだりをしてみた。
この状況でその部分に触れてもらえない辛さは男同士なら分かっているはずなのに、北山さんは意地悪だ。
俺のおねだりに一瞬体内を探る手を止めた北山さんは、濃厚なフェロモンだけでイッてしまいそうな男前の笑みを浮かべて、赤い突起に軽く歯を立てた。
「いっ、ああ、ンっ!」
「昼の仕返しだ」
「……しかえ、し?」
「あんなに可愛く俺を煽って、放置しやがって。勃っちまったモンを落ち着かせるのに俺がどれだけ苦労したと思ってやがる」
「あ、あッ、北山さん、それ、やだっ、コリコリしないで……っ」
執拗な愛撫で感じやすくなったソコを舌先で押しつぶすように強く責められて、俺はもう、乳首だけでイッてしまいそうな快感にピクピクと腰を震わせて泣いた。
昼のアレは、煽るとかそんなつもりじゃなくて、北山さんに「大好き」の気持ちを伝えたかっただけだ。
北山さんのが勃っていることには気付いていたけど、大人の北山さんはきっとすぐにいつもの冷静な料理人の顔に戻るんだと思っていた。
「おい……泣いてるのか、坊主?」
「お、俺だけ……こんなに、恥ずかしいのは、ヤです……!」
一緒に気持ちよくなりたいのに、俺だけ感じて、まだ北山さんに何もしてあげられていない。
頑張っていっぱいエッチなサービスをしたいと思っていても、そんなに経験豊富じゃない俺は北山さんのテクニックに溺れて、お返しをする余裕なんて全然ないんだ。
「悪かった。少しいじめ過ぎたな」
「きたやまさん……」
ペニスに触れられもしないのに、お尻と乳首を弄られただけでイッてしまいそうな自分が恥ずかしいのと、北山さんに何も出来ない情けない気持ちに溢れてきた涙を熱い指先で拭って、困った顔で笑った恋人は、恥ずかしい穴をほぐしていた指をソコからそっと引き抜いた。
「恥ずかしいのは俺だって同じだろうが」
「っ!」
「お前のエロい声を聞いてるだけで、もうこんな状態だ」
下着ごと降ろされたパンツから、北山さんの逞しい雄茎が、ぶるんっと勢いよく飛び出す。
ガチガチに勃起して天を向いたソレは、張り出した先端部分を大量の我慢汁に濡らし、光らせていた。
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