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「お前だって別に、一緒に過ごす相手がいないワケじゃねーんだろ。女の子集めて適当に騒げばいいだろうが」
「そんなの、何の意味もないっすよ」
「意味って何だよ」

 新堂じゃなきゃ、駄目だ。

 今の俺には、新堂以外にクリスマスを一緒に過ごしたいと思える奴なんていない。

 ――ただ、俺にとってはそうでも、新堂はそれほど俺と過ごす気がないらしい事がかなり堪える。

「新堂が欲しがってるモノって、何すかねー」

 大島さんのマイ枝豆に手を伸ばし、ヒョイとつまみ上げながら呟くと、枝豆好きの先輩は眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせて俺を睨みつけた。

「俺の可愛い部下をプレゼントで釣る気かコラ」
「俺の可愛い後輩を毎日ビビらせてシゴいてるくせに」

 一日中新堂と一緒に仕事をして、手取り足取りアイツを可愛がってやれるなんと羨ましい!
 ……とは、さすがに声に出しては言わないけど。

 可愛い新人君と枝豆を巡って、二人の間で静かに火花が散らされる。

 先に大人の対応を見せたのは、もちろん俺の扱いに慣れた大島さんの方だった。

 食いかけの枝豆ボウルを俺の前にドンと置き、カウンターの向こうのオバチャンに新しい枝豆を頼んで、食えない先輩がニヤリと笑う。

「そういや年末の配送臨時アルバイトを増員したがってたなー、新堂の奴」
「どんなクリスマスプレゼントっすか! つか、新堂はそんな事言わねえっすよ」
「でも、バイトが増えたらきっと喜ぶぞ」
「それは経理じゃなくて総務に相談して下さいよ。そもそも俺に金出す力なんてねえんだから」
「チッ、使えねえ野郎だ」
「……」

 一応冗談っぽい流れではあるが、心底残念そうに舌打ちする大島さんの顔を見て、この先輩は本気で新堂の名を騙ってバイトの増員を持ち掛ける気満々だったに違いないと俺は悟った。

「そんなに新堂と野郎二人のムサ苦しいクリスマスを過ごしたいなら、もう一回真剣に誘ってみりゃいいだろうが」
「……もっかい誘って、本気で断られたらヘコむっす」
「お前がそんなデリケートなタマかよ!」

 何とでも言え。

 俺だってこんなのはらしくないと思っているし、何で新堂だけがこんなに特別なのか分からないけど、とにかくあの可愛い後輩が俺以外の誰かとクリスマス・イヴの夜を過ごすのは嫌なんだ。

「ま、その様子ならクリスマスまでには新堂の欲しいモノに気付くかもな」
「えっ!? 大島さん、アイツから何か聞いてるんすか!」
「何も」

 何も、というワリにニヤニヤ笑っている辺り、絶対に新堂の欲しいモノに心当たりがあるに違いない。



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