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「もー無理っすよ、俺は。トビシマさんのチンコに付き合ってたらあっという間に弾切れになっちまいます」

 玄関先で軽くじゃれ合ってあっさり離れていく身体を、抱き締めたい。

 昨日散々出すモノを出してすっきりしているはずなのに、まだ何かが足りていない気がするなんて。
 ヤリたい盛りをとっくに過ぎて、いい加減に下半身も落ち着く年齢に到達していながら、新堂に対しては我慢の効かないこの聞き分けのないチンコをどうしていいのか、俺自身にもよく分かっていなかった。

「若いくせに淡泊な奴だな」
「イヤ、先輩が元気過ぎるだけですって」

 そう。
 どういうワケだか俺の下半身は、新堂といると常にフル充電状態なのだ。
 もしかしたらこれは、何か深刻な病気なのかもしれない。

「新堂」

 ドアを開け、ひんやりと鼻先を掠める朝の空気にフルッと身体を震わせる新堂の横に並んで、一連のじゃれ合いで流されかかった話題をもう一度だけ振ってみた。

「席、取れたら帰って来いよ。俺に一人ぼっちの寂しい夜を過ごさせる気か」

 カギ穴にカギを突っ込んで顔を上げた後輩が、俺を見た瞬間に小さく吹き出した。

「飛島さんのその顔、昔実家で飼ってた犬のおねだり顔にそっくりです」
「ちょっとキュンときた?」
「んー、でも勝手に予約と時間変えて帰ると旅費の精算が面倒で経理にも迷惑かけちゃうんすよね」
「お前それ、旅費の担当が俺だって分かって言ってるだろ」

 今までの付き合いから、新堂が俺の“おねだり顔”に弱いことは分かっている。

 何が何でもクリスマスイヴを誰かと一緒に過ごしたいなんていう少女趣味な思考は持ち合わせていないが、この可愛い後輩が地元で俺の知らない女と会って、クリスマスムードに流されて喰われるような事態だけはどうしても回避したい。

 俺がそんなワケの分からないモヤモヤした感情に振り回されている事も知らずに、軽い足取りで先に歩き始めた新堂は階段の手前で振り返って、意味ありげな笑みで俺を見つめてきた。

「もしかして飛島さん、ケーキ買って男二人でプレゼント交換とかしちゃうつもりっすか?」

 俺に何と答えて欲しいのか。
 この生意気な後輩は、時々こうやって俺の反応を試す真似をする。

「リクエストがあればシャンパンとミニツリーも買うし、サンタコスプレも前に社員レクの余興で使った衣装が課のロッカーにある」
「そこまでは全然求めてませんけど」
「何か欲しいプレゼントがあるなら言ってみろよ」

 男二人でプレゼント交換はさすがに寒過ぎるけど、隣に越してきてからずっと世話になっている新堂に、日頃のお礼という意味も込めて何か贈るのは悪くない気がする。
 そう思って訊いてみると、可愛い後輩君は質問には答えず、ただ小さくため息をついた。

「そんなに本格的なイヴを俺と過ごす気満々なら、そろそろ気付いてくれてもいいと思うんすけどねー」
「はっ?」

 気付くって、何に。

「イヴの話、ちょっと考えさせて下さい」
「や、考えるって……」

 もしかして、これはアレか。
 プレゼントの内容次第では帰ってきてやってもいいぞという、俺への揺さ振りか。



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