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12月24日、クリスマスイヴ。
毎年その日は、彼女募集中の友人や同僚を集め、行使できる限りのコネで揃えた女の子達と盛り上がって過ごす、一年間の合コン活動の総括的な日と決まっていた。
去年までは。
「――クリスマスイヴ?」
今まで数々のカップルを成立させてきた異業種交流会を解散して合コン帝王の異名を返上した今年は、隣に住む後輩と二人で美味い酒を飲みながら静かに過ごすのもいいなと思い、さりげなく話題を振ってみた瞬間。
「無理っすね。だって俺、その日の晩は東京っすよ」
ネクタイを結んで鏡の前で形を整え、ジャケットを羽織った新堂は、俺の申し出をあっさり却下した。
入社したての頃はネクタイを結ぶ手つきもぎこちなくて、スーツ姿が初々しい新人君だったのに。
すっかり社会人生活に慣れてきた最近は外見にも自信が表れてきたのか、急激に男ぶりが上がったと社内の女性陣にひそかなファンが増えていて面白くない。
「知ってる、本社で安全管理講習だろ。つか、日帰りの出張命令じゃねーのかよ」
「そのはずだったんですけどね。どのみちこっちに着くのが遅いんで直帰扱いになるし、せっかくだから金曜と土曜は実家に泊まって来てもいいぞって、大島主任が」
大島さんめ! 新堂に余計な知恵をつけやがって。
資材管理部から新堂の東京出張の予算要求が回ってきた時点で嫌な予感はしていたが、何だかんだ言ってこの新人君を可愛がっているらしい大島さんは、やっぱり出張ついでにクリスマスを地元で過ごさせてやるつもりでいたらしい。
俺も新人の時からあの先輩には散々世話になっているものの、今はただ、大島さんの兄貴肌な面倒見の良さが恨めしかった。
「実家なんてどーせまたすぐ正月に帰るだろうが」
「まあ、そうなんすけど。今回は年末年始に会えない奴らと遊んだりしようと思って」
「……女?」
別に、新堂が地元で誰と遊ぼうが俺には何の関係もないと分かっていながら、何となく訊いてみると。
腕時計を確認して鞄を手に玄関に向かう新堂が、振り返ってニヤリと笑い挑発的な視線を寄越してきた。
「気になるんですか」
「お前な。最近生意気だぞ、コラ」
「いてっ」
俺もジャケットを羽織り、玄関に投げっぱなしにしていた鞄を拾い上げがてら、生意気な後輩の股間のモノを軽く下から握ってやる。
「朝っぱらから何のセクハラですか」
「今から一発抜いたらさすがに遅刻するよな」
「昨日散々付き合ったでしょーが!」
昨日の夜。
会社帰りに酒と食材を買い込んで、自分の家にも帰らず、隣に押し入って。
美味い手料理を腹一杯食った後、風呂上がりにムラムラして、お互いに種が尽きるまで散々抜き合った。
それなのに、まだ新堂が足りない。
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