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「飛島さん、今ソファーの上片付けますから」
「まだ眠くねー。なあ、お前ももっと飲めよ」
「俺まで酔い潰れたら誰が先輩の面倒見るんですか」
寝場所を確保するから腕を解けと言っても、いい具合に酔っ払った飛島さんは全然動いてくれなかった。
「生意気言うなっ。長いモノに率先して巻きつけって、教えただろーが」
「あーもう鬱陶しい!」
偉そうに先輩風を吹かせるような事を言っているワリには、新人にギュウギュウ抱きついて甘えていて、全く説得力がない。
酔った時のコレさえなければ、頼れる兄貴肌のイイ先輩なのに。
「こんなグダグダな先輩のどこが“長いモノ”なんですか」
「んー?」
本当は、飛島さんが上司からも後輩達からも信頼されている事は知っているし、部署異動の数から考えても出世株なのは間違いないと思うけど。
駄々っ子の先輩をからかうようにわざとそう言って笑うと、俺の肩の上に顎を乗せた飛島さんが不満げに鼻を鳴らした。
「俺は長いぞ」
「そっすか」
「長いだけじゃなくて太くて硬いし超黒いし。持続力だってすげーんだ」
「……今何の話してましたっけ」
持続力って。
いつの間にか、話題が飛島さんのチンコ自慢になっているような。
そもそも、飛島さんのアレの凄さなら、わざわざ聞かなくても嫌という程知っていた。
合コン帝王のこの先輩が時々お持ち帰りしてくる女とあんなコトやこんなコトを楽しんでいる間中、薄い壁一枚隔てた隣部屋の住人である俺は、「凄い、大きい!」だとか「気持ち良過ぎて死んじゃう」とか「こんな凄いの初めて!」とか、聞きたくもない称賛の声を聞かされ続けているんだから。
相手にそこまで言わせるイチモツとセックステクは心底凄いと思うが、隣に会社の同僚が住んでいると知っていてあれだけアンアンギシギシ激しいプレイが出来る神経がもっと凄い。
「とにかく。この手を離してもらえませんかね、先輩」
「んー……ぬくぬくする」
「暑苦しいっすよ」
駄目だ。全然通じてない。
まさかこのまま寝てしまうなんて事はないだろうな。
いつの間にか俺の身体は飛島さんの長い足の間に納まっている。
後ろから包み込むようにガッシリ抱き締められるという、まるで蜜月を過ごす甘々ホモカップルのような状況に気が遠くなりかけたその時。
飛島さんが、耳元でぽつりと呟いた。
「俺……恋とかそーいうの、もう疲れたから、いいんだ」
「へ?」
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