衝撃の告白。



「“チンコとケツには気をつけろ”…か」

夕食を終えて部屋に戻り、宿題にとりかかろうと机に向かったものの何となくはかどらず、ぼんやりしていたらつい独り言を零してしまったらしい。

同室の井上がそれを敏感に聞き付け、反応してきた。

「何ソレ?今日の英文の和訳?」

…アホだな、お前。

どんな高校英語の教材だよ。大体、そんな英語覚えて、一体いつ使うんだ。

「家を出る時、兄貴に最後に言われた言葉。ウチの兄貴、男子校っつったら皆そこら辺でお互いのモノ扱いて抜きまくってると思ってんだよ」
「うわっ!すげー偏見っ。…つーか、妄想…?お前の兄ちゃん、何か男子校に纏わる嫌な思い出とかあった?」
「…イヤ…」

あれは多分、普通にそう信じ込んでるだけだ。

昔っから兄貴は、思い込みが激しいというか、一度信じたら引きずりやすいところがある。

しかも単純で何でもすぐに信じるから、結構タチが悪い。

「いくら全寮制の男子校だからって、ホモとか滅多にいるワケねーよなぁ」
「そりゃそうだろ。男子校がそんな危険地帯だったら、ゲイじゃねぇ奴なんて怖くて一人も入ってこねぇっての」
「だよなぁ」

安心して、再び勉強にとりかかる。

「大体この学校で、俺以外にゲイの奴見た事ねーし」
「………」

一瞬、日本語として理解したくない言葉が聞こえた気がした。

「…冗談?」
「本気。でも安心しろよ。松崎俺よか背ぇ高いし身体もゴツいじゃん。間違っても、お前相手に勃ったりしねーから」
「……あ、そう……」

なんかそれはそれで、男の価値を低く見積もられてるみたいで不本意な気もするけど、実際発情されても困るからな。

―――つーか。

怖ぇっ!
やっぱ世の中そういう趣味の奴いるんだ!

今すぐ退校して寮から撤収したいっ。



あの日、大きな目を潤ませて真剣に俺を心配してくれていた兄貴を邪険に扱ってしまった事を、今頃になって心底後悔する。

そしてこの時。
あんなにも俺のケツを心配していたはずの兄貴自身が、俺の知らないセクハラ上司の毒牙にかかろうとしていたなんて事を、俺は知る由もなかった…―――。




○●○

拍手御礼でしか登場しない松崎弟ですが、個人的にすごく気に入っています。

“全寮制男子校”の苦手克服には失敗したものの(生徒会長とか風紀委員長とか寮長がみんなホモだったりするのが書けず…)、ちょくちょく活躍の機会を与えてあげたいな。





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