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「あ、そうだ、仲山さん。よかったら連絡先を交換しない?」

急に何かを思い出したように、崇さんが提案してきた。

「ええ、いいですよ。名刺…より、プライベートの番号の方がいいかな」

この店の常連客の誰も、崇さんがどこで何をしている人なのかを知らない。
普通は何度か話しているうちにお互い仕事や家庭の話になるところを、崇さんはいつも上手く流して聞き役に徹し、自分の職業について語る事はなかった。

だから、仕事については知られたくないのかもしれないと思って気を効かせてみると、

「うん、ちょっと待ってて。今…」

取り出した携帯に何やら手早く打ち込んだ後、ハイ、とこちらに向けてきた。

「松崎君の欲しがってたゲームね、開発関係の人間にツテがあるから多分タダで手に入るよ。もらったら、連絡するから」
「いいんですか?」
「俺と仲山さんの仲じゃないかー」
「ありがとうございます!」

松崎がどんなに喜ぶだろうと思って、その顔を想像しただけでつい俺まで笑顔になる。
赤外線で交換した情報を確認しようと携帯画面を見てみると、そこには『崇・ザ・カリスマモデル』の名前の下に電話番号とアドレスが並んでいた。

「…崇さん…芸が細かいですね」
「イヤー、最近店に来る度に松崎君のあの憧れの眼差しっぽい視線を感じるのが気持ちよくって!」
「…」

雰囲気から察するに、多分それなりの立場にある人間なんじゃないかと思われるのに、茶目っ気たっぷりのこの人が俺は結構好きだ。

「さて、そろそろ帰ろうかな…。毅、帰るぞー」

立ち上がった崇さんがボックス席で盛り上がっていた毅君に声をかける。
毅君は松崎にぎゅっと抱き着いて首を振った。

「えーっ、やだよ。まだお兄ちゃんと遊んでいたい」
「わぁ、毅くんの頬っぺたぷにぷにっス!」
「…!」

すりすりと松崎に頬をこすりつけて甘えるその姿に我慢出来なくなり、思わず俺まで立ち上がってボックス席に向かい、松崎の首根っこを捕まえる。

「お兄ちゃんももうお家に帰らないといけないんだ」
「仲山さん、目が怖いってば」





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