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崇さんのツッコミもとりあえず今は聞き流し、毅君とヒシッと抱き合った松崎を連れて帰ろうと首ねっこをクイクイ引っ張ると、松崎にしがみついたままの毅君が頬を膨らませて俺を見上げてきた。

「オジサン一人で帰ればいいじゃん」

こ…このガキ!

「おい、松崎。帰るぞ」
「しゅにーん…まだ遊んでいたいっス」
「駄目だ」

さっきまで可愛いと思っていた事も忘れ、小さな身体をペリッと剥がして松崎をぐいぐい引っ張る。

「悟お兄ちゃん!」
「毅くぅぅーん!」

まるで無理矢理別れさせられる恋人のような構図に更に不機嫌さが増し、大和君が必死に笑いを堪えながら会計をしてくれている間もジタバタと暴れる松崎を離す事はなかった。
…しばらく店に来づらくなっても、気にするものか。

振り向くと、毅君も崇さんに抱き上げられたまま手をブンブン振っていた。

「お兄ちゃん、また遊ぼうね!」
「うぅっ…そのゲーム機、今度会える時まで預けておくっス!友情の証に…っ」

…友情育むなよ。小学生と。


崇さんに目で挨拶をして、店を出る。

しょんぼり後をついてくる松崎に、少し躊躇った後、声をかけた。

「松崎は…子供が好きなのか」

こんな事を聞いて別にどうしようというワケでもないのだが。
何となく。
いつかこいつが俺から離れて父親になってしまう日が来るのかと思うと…。

「毅君は初めて出会った『味噌黄門』のファン仲間っスよ!」
「…『味噌黄門』…?」
「あんなに小さいのに、ちゃんと初代シリーズから知ってるなんて凄いっス!むしろ心の師匠っス」
「……」
「はっ!いくら心の師匠っていっても毅くんと抜きっこしたりはしないっスよ。俺には主任だけですからっ」


…どうやら。
子供の相手をしてやっていると見せかけて、相手をしてもらっていたのは松崎の方だったらしい。

すっかり毅くんに心酔した様子の松崎を連れて、夜の街をゆっくり歩く。

今度会う事があったら、俺も毅君と話してみたい。
松崎が好きな時代劇についてレクチャーしてもらうのも悪くないな。


後ろからついてくる温もりの分だけ

心が少し温度を上げていた。



end.





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