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毅君は大和君に見せたいと言っていたはずの新しいゲームだったが、食いついたのは松崎の方だった。

「みっ…『味噌黄門とウフフなダンジョン』!欲しかったのに売切れてたっスよー!限定生産でもう手に入らないっス」
「これ、父さんの知り合いからもらったんだ」
「うわぁっ…うらやましいっス!」

その声は心底羨ましそうで、もうよだれを流さんばかりの勢いだ。

「ラッキー、印籠ゲット」
「あっ!上から悪代官が…!」
「大丈夫。印籠を持ってる間は無敵になれるんだよ」

何やらガッツリ食いついて、ゲームに熱中しているらしい松崎と毅君。
あんなに目をキラキラさせた松崎の最高にイイ顔を、俺だってまだそんなに見た事はないのに…。
しかも、いつの間にかボックス席に移動した二人は身体をぴったりくっつけて食い入るように小さな画面を見続けている。
ちょっと距離が近すぎじゃねぇか。

「…仲山さん、目が怖いよ…」

崇さんに言われてハッと我に返る。
子供相手に大人げない嫉妬をしてしまった自分が恥ずかしくて、少し気まずかった。

「可愛いお子さんですね」
「ホントは“近付き過ぎだ!松崎から離れろ”とか思ってたんじゃないの?」
「はは、まさか。子供相手にそんな…」

本当に食えない人だな。この人は。
でも、毅君を可愛いと思ったのも嘘ではなかった。

「俺は男しか愛せない人間ですからね。子供なんて考えた事もなかったけど…。こうしてみると、少し羨ましい気がします」

間違いなく崇さんの血を受け継いだ小さな存在。
そして、一緒にはしゃぐ松崎をじっと見つめる。

「まぁあんなに可愛いのは俺の子供だからなんだけどね!遺伝子の奇跡ってヤツだよね!」
「…はぁ」

親バカ丸出しの崇さんにポン、と肩を叩かれ、曖昧な返事しかできずにカウンターの中の大和君に視線を向ける。
大和君は相変わらずの柔らかい表情でニコニコと毅君を見つめていた。

この二人は俺が思っているよりずっと複雑な関係なのかもしれない。
でもきっと、そこには彼らなりの幸せの形があるんだろうな。
しばらく会話が途切れ、ほのぼのと温かい空気が周りを包み込んでいるような気がした。






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