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「俺って…こう見えて実は、手とか目茶苦茶早くて、軽〜い男なんスよ」
「…へぇ…」

真面目な顔をした部下の口から飛び出してきたのは、残業とは全く関係ないと思われる、まさにどうでもいい情報だった。
“こう見えて”っていうか…。俺からすれば実際そうとしか見えないんだけど、それは敢えて言わない事にする。

大竹君は、まだ話すかどうかを迷っている様子で慎重に言葉を続けていった。

「それで…、伊坂サンってモロ俺の好みのタイプで…」
「…ん…?」

何やら、話の流れが怪しい方向に進んでいきそうな雰囲気。

「シス管に異動してきた初日からやべーって思ってて、話したらすっげぇ可愛いし、こんな密室に二人でいると昼でもムラムラしてくるし、残業なんてしたらもう俺絶対に伊坂サン食っちまうって思って…」
「んんん?」
「だから、俺、伊坂サン襲ったりしないように早く帰ってたっつーか。や、でも、よく考えたらそのせいで伊坂サン一人で苦労してたんスよね。マジすいませんっした」

ガバッと頭を下げる大竹君を前に、俺は瞬きをするのも忘れて固まっていた。

…え…何今の…。
ムラムラ…襲う…?それってつまり…。
思っている事を、恐る恐る口に出してみる。

「大竹君、もしかして…男性を好きになっちゃうヒトなのか」
「まぁ、いわゆるゲイってやつっスね」
「えぇーっ!」

それは驚きの新事実だった。
まだ“俺って実はヤバいチームのリーダーやってたんスよ”とか言われた方がすんなり納得できるかもしれない。
しかも密室でムラムラって。
俺は今まで何も知らずに、そんな危険な環境の中で働いていたのか。

まじまじと大竹君を見つめるが、その目は嘘をついていたり冗談を言っているような目ではなかった。

「最初は無理矢理食っちまってもいいかなって思ってたんスけどね」
「なっ…!」

いやいや。それは軽く犯罪だ。

「なんか、伊坂サンの事は大切にしてぇなって思って、それで手ぇ出すのずっと我慢してました」
「是非、これからも我慢し続けて欲しいんだけど」

もう頭の中がぐるぐるして、何を考えたらいいのか分からない。
大竹君は口元にニヤリと危険な笑みを浮かべてそんな俺を見つめ返してきた。
椅子をグイッと引き寄せられて、急に顔の距離が近くなる。





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