memo | ナノ


SS:花見


2011/04/21

見上げれば、水色とピンクの綺麗なコントラスト。
周りには同じように敷物の上で飲み食いしている連中が大勢いる。

「はーい、みんなで持ってきた物出し合いましょー!」

立ち上がって無駄に声を張るのは、一つ年下の椿木由乃。
彼女の提案で、私達は花見に来ていた。

あれは確か水曜日のことだ。放課後、流羽と由乃が教室に入ってきて言った。

「せっかく桜咲いたのに、日曜日雨みたいだから土曜日にお花見行こう」

と。
無論私は断ったのだが、流羽の押しに負けて(こういう時は引いてくれない)こうして来たというわけだ。

明日が雨だなんて信じられないくらいに、とてもいい天気。
“こいつ”さえいなければ、最高の花見になっただろう。

「オレは和菓子。やっぱ花見と言ったら団子だよね、団子」

それは確実に『花より団子』からのイメージであって、花見で団子を食べてる奴を私は見たことがないぞ。
自信たっぷりに5本入りの団子のパック(専門店で買ったらしい)とおはぎを取り出したのは、やはり一つ年下の苓泉魁璃。理事長の息子だ。こいつとは口に出すのもおぞましい因縁があって、出来ることなら顔を合わせたくなかった。誘った奴を呪いたい。
まぁ、どうせ流羽なんだろうが……

「私はおにぎり」

控えめに、でかい風呂敷に包まれた大量のおにぎりを出したのが大崎流羽。同じ学年で生徒会長。

「俺は大崎に頼まれておかずの類を持ってきた」

今度は紙袋から重箱が出てくる。きっと中身は手作りなんだろう。こいつ、耶雲千知の。
口も性格も悪いが、こいつの料理の腕はピカイチだ。

「芽琉さんは?」

次々に出てくる食品に目をキラキラさせた由乃が、期待の眼差しで私を見た。

「適当にコンビニでチョコとポテチと……他にもいろいろ買ってきた」

菓子類しか入っていない袋を差し出す。一応期待には応えられたようで、由乃はうんうんと頷いた。
それにしても、よくこれだけの人数がいて被らなかったものだ。

「椿木は何持ってきたんだ?」

「あたしはジュースと、コレです」

出てきたのは2リットルのペットボトル3本と……

「するめ?」

「宴会と言ったらするめ!これに限る!」

「オヤジかよっ」

「さすが椿木。女捨ててるね」

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