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「グララララ! マルコ、お前ェ、アレを飲んだのか」

 驚いたことに、白ひげはマルコがこうなった原因を知っていた。
 話によれば、やっぱり、原因はサッチが持ってきたあのボトルだったようだ。
 何でも、同じようなものを飲んだ人間を見たことがあるらしい。口ぶりからしてずいぶん昔のようだったが、一体誰の話だったんだろうか。
 少しの間だけ若返ることの出来る不思議な酒があるなんて、グランドラインというのはやっぱり俺の理解を超えている。

「…………どういう状況なんだ?」

「お帰り。早かったじゃないか」

 白ひげとの話を終えて戻った俺とマルコの前にあったのは、フランスパン置きからイゾウの椅子へ昇格したサッチの姿だった。
 白ひげから聞いてきた話をして、知らなかったらしいサッチはそこでようやく解放された。
 よろよろとした動きで膝を伸ばして立ち上がりながら、サッチがこちらを見て笑う。

「へぇ、面白ぇ酒だな……ったたたた! イゾウ、足、足!」

「懲りてない馬鹿には撥当てとかねえとな」

 俺の言葉を聴いて楽しそうな顔をしていたサッチが、今は思い切り顔をゆがめている。
 そのつま先をぐりぐりとかかとで踏みつけて、イゾウが俺と俺が抱き上げたままのマルコを見やった。

「それで、どのくらいで元に戻るって?」

「小さい瓶だし、二人で分けて飲んだから、今日一日か二日くらいだろう、と」

「そういや、ナマエには効かないのか」

 俺達のやりとりを見ていたビスタが、そんな風に言って首を傾げた。
 その発言に、そういえば、とイゾウとサッチもしげしげと俺を見る。
 確かに、俺もあの酒を飲んだはずだが、体に変化はない。
 よく分からないまま、俺は自分の予想を口にした。

「きつい度数だったから水割りにして飲んだし、寝てる間に縮んで、起きたころには元に戻ってたんじゃないか。マルコに比べたら量も飲んでないから」

「ああ、なるほど。ナマエは酒弱いからな」

 俺の発言に、その場の俺とマルコ以外の全員が納得顔になる。
 失礼なクルー達に眉を寄せた俺の腕の中で、マルコが不思議そうに首を傾げた。

「マル、よくわかんないよい」

「ああ……まあ、元に戻れば分かるさ、マルコ」

 マルコの言葉に優しげな顔をして、イゾウがよしよしとマルコの頭を撫でる。
 イゾウがどうして小さなマルコにこうも優しいのかは分からないが、いい相手が見つかったと気付いて、俺は抱き上げていたマルコをイゾウのほうへと差し出した。

「それで、元に戻るまではこのままだから、俺が仕事してる間、マルコを預かってくれないか?」

「おれがかい? 別におれは構わねぇが、」

「やあよい!」

 俺とイゾウの間の会話を遮るように声を上げて、マルコがじたばたと身をよじる。
 落ちてしまいそうなその動きに慌てて、俺はマルコを自分のほうへと抱え直した。
 それと同時に、がしりと小さな両手が俺の首へ回る。

「マルコ、危ないから暴れないでくれ。降りたいんなら、」

「やあよい! マル、ナマエといっしょがいいよい!」

 そうしてそんな風に言いながら、ぎゅうぎゅうと細い腕が俺に抱きつく。
 僅かに首を絞めているそれに片手を使って呼吸を確保しながら、俺はちらりと正面のイゾウを見た。
 マルコの反応に目を丸くしたイゾウが、俺の視線に気付いて楽しげに笑う。

「マルコもこう言ってることだし、ナマエはマルコについててやんな。その間の仕事は、うちのと一番隊ので補うよう言っとくさ」

 マルコが元に戻ったら埋め合わせてくれと言われて、俺は頷くしかなかった。




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