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14



 決着をつけるなら、エースが白ひげに入る前に決まってる。
 そして決行するなら、ティーチには逃げ場の無い海の上がいい。
 そう判断して、俺は船出まで待つことにした。
 港を明日の昼間に発つことになって、クルー達は最後の用事を済ませるためにずいぶんな人数が港へ降りている。

「ようナマエ、たまには俺達に付き合うか?」

 そんな風に声を掛けてきたのは、昼間に俺と一緒に買出しをしたクルーで、言葉の意味が分からず俺は首を傾げた。
 買い物は終わったはずだが、足りないものでもあったのだろうか。
 不思議そうな俺を見て、よく笑うクルーは今度も笑った。

「夜に島へ降りるつったら、決まってるだろ?」

 楽しそうに寄越されたそれに、少しばかり考えて、ぽつりと呟く。

「…………女?」

 そういえば、そんな話を昨日サッチが大きい声でしていた気がする。
 白ひげ海賊団にはナースも多く乗っているが、男はそれ以上に多い。
 性欲処理が必要になるのは当然のことで、つまりは今俺を誘っているクルーは、俺にも女を買いに行かないかと言っているのだ。
 何と言って断ろうか、と考えていたら、俺が迷っていると思ったらしいクルーが言葉を重ねてきた。

「な、行くだろ? マルコ隊長も行くってよ!」

 先に降りていったんだ、と寄越された言葉に、ほんの少し体が強張ったのを感じる。
 けれどもそれは一瞬のことで、すぐに力を抜いた俺は、クルーを見上げて首を横に振った。

「…………ん、いかない」

「何だよーノリ悪ィなァ」

 口を尖らせてそう言いながら、けれどもクルーは簡単に引き下がってくれた。
 そのまま歩き出した相手を見送って、軽く手を振る。

「いってらっしゃい」

「おう。もし行きたくなったら降りてこいよ!」

「ん」

 そんなことは絶対に起きないだろうと思ったけど、とりあえず返事をして頷いた。
 何人かと連れ立って船を降りていく様子を見送ってから、そのまま船内へと戻る。
 少し自分がふらついている気がしたけど、いつもに比べて人の少ない船内では誰かに遭遇することもなく、俺は一室の部屋の前にたどり着いていた。
 それは、俺が勝手に私室扱いしている書庫でも荷物置き場にしている大部屋でもない、マルコの部屋だった。
 さっきのクルーの言葉が本当なら、ここには誰もいないはずだ。
 通路を見回して、誰にも見られていないことを確認してから、そっと扉を開く。
 中は薄暗くて、確かに人がいないことを俺へと伝えた。
 そのまま室内へ侵入して、しっかりと扉と閉ざす。
 窓も無い室内は暗いけど、前にマルコがやっていたように壁際にあったカンテラへ火を入れれば、簡単に室内は明るくなった。
 俺用のベッドがないマルコの部屋は、ずいぶんと広いように感じられた。
 けれどそれは気のせいだ。もともと部屋の広さはこのくらいで、俺の所為で狭くなっていただけだ。
 マルコがいつも寝てるだろうベッドに近付いて、部屋の主がいないのをいいことに、ごろりとそこへ横になる。
 見上げた天井は俺がここで寝起きしていた時と同じもので、それもずいぶん懐かしいような気がした。
 顔をシーツへこすり付けるようにすれば、マルコのにおいがする気がする。
 落ち着くような落ち着かないような気分にさせるそれを少しばかり吸い込んで、俺は体から力を抜いた。
 女を買いに行ったなら、マルコはしばらく帰ってこないだろう。
 もしかしたら、朝まで帰ってこないかもしれない。
 そんな風に思うと何だかさびしい気がしたけど、別にマルコは俺のものでもなんでもないのだから、そんな風に考えたって仕方ない。
 一時間くらいなら、ここにいても大丈夫だろうか。
 そんなことを考えていたら、なんだかうつらうつらしてしまって、気付けば俺は、そのままマルコのベッドで眠り込んでいた。





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