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13





 俺の初陣が終わってから、しばらく。
 俺は、多分他の新人の誰よりも必死になって訓練をした。
 目標が決まったのだから、後はそれに向けて自分を合わせるだけだ。
 けれどもやっぱり持って生まれた体の違いは大きくて、俺は非力なままだった。
 それでも、剣さばきはうまくなったとハルタに褒められた。
 銃の腕もなかなかだと、イゾウも笑っていた。
 雑用の合間にひたすら鍛錬を重ねて、気持ちはもはや麦わら海賊団の剣豪だ。あそこまでのものを振り回すことは無理だけど。
 そうやって少しは体力がついて、何度目かにたどり着いた島で、絵の具も手に入れた。
 有名になった画家の出身町らしく、それにちなんだ画材道具があちこちで売られていた島の、大きな画材屋で買ったそれは甘いにおいがするものだった。その有名になった画家のモチーフが殆ど食べ物だったことから、そういうにおいがするものを売っていたらしい。
 どの種類が一番いいのか分からなかったから、適当に色々と買って、実際に塗りつけて全部試した。
 さすがに葉までは色を塗りつけて乾かすのも大変だったので、黄色かった葉はつるごとむしった。
 今では一見してどう見ても『ヤミヤミの実』であるあの悪魔の実は、俺以外に立ち入る人のいない書庫の中に隠してある。
 海楼石の弾丸も、イゾウが手配してくれた分を受け取ることが出来た。
 ここぞと言うときに使いなよと言われたそれも、悪魔の実と一緒に隠してある。
 『宝払い』では料金が足りないんじゃないかと心配したけど、イゾウは俺が渡した宝以上の請求をしなかった。多分、一部は出してくれたんだろうと思う。
 全部が全部、順調だった。
 一番隊のほかのクルーと一緒に買出しに出たときに、一つの手配書を見つけるまでは。

「………………」

「どうした? ナマエ」

 呼びかけられて、はっと意識を引き戻す。
 どうやら壁に貼られた手配書に夢中になっていたらしい。
 不思議そうにしたクルーが俺のほうへと近付いて、首を傾げながら俺が見ていたのと同じ壁を見やった。

「今年もルーキーが出てきたなァ。こいつなんて、この間出た額よりもうこんなに上がってやがる。威勢のいいこった」

 けらけら笑いつつクルーが指差した先にあったのは、テンガロンハットを被った海賊の写真だった。
 俺の目を奪ったのも、同じ手配書だ。
 まだ、金額はそんなに大きくない。
 けど、それは確かにエースの手配書だった。
 時間が迫ってる。
 目を見開いてそれを見上げた俺は、それから小さく息を吐いた。
 そうして、他の手配書の評価をあれこれと言っているクルーを見やって、行こう、と声を掛ける。

「早く帰らないと、怒られる」

「あァ、違いねェ。ナマエをつれてどこ歩いてたんだってどやされるのは勘弁だ」

 俺の言葉に笑ったクルーの台詞の意味は分からないけど、ん、と一つ頷いて、俺はクルーと並んで歩き出した。
 両手に抱えた荷物は重たくて、モビーディックまでの道のりは近いはずなのに遠く感じた。




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