Short Novel | ナノ


▼  !!! NIGHTMARE OF HALLOWEEN !!! 

 氷のつぶが突き刺さるような風が、びゅうっと通り過ぎていく。誰かが裏口でも閉め忘れたんだな。思わずぶるっと震え、毛布を頭からかぶりなおした。
 階下の廊下を小走りで進んでいくと、扉が半開きになった小部屋から、もくもくと湯気があがっていた。
 この階にはあまり降りてきたことはないが、たぶん召使の集会所かなんかだと思う。暖かそうだ。そこにしよう。
 だが、そんな生暖かい餌につられてはいけなかった。鋭いかえしが何本もついた、トゲトゲの釣り針がその先で笑っていたのに。
 部屋に飛び込んだとたん、まず感じたのは、背中を駆けていく悪寒だった。
 おれは真っ青になった。テーブルには、魔法使いがいた。
 全身黒ずくめでマントをはおり、お約束のとんがり帽子は、頭の後ろに滑り落ちてしまっていて、細い紐でなんとか首にしがみついている。最悪に似合わない付属品の星のついたおちゃめな杖が、木製のテーブルに突き立てられてきをつけをしていた。
 かわいらしい呪文を唱える魔法使いより、夜な夜な生き血をすするドラキュラのほうが、よっぽど面構えに合っているはずだ。そのぞっとするような不満げな表情から、自ら進んで身につけたわけではないのは感じ取れるが。
「何その格好。泥棒でもするの?」
 おそらく俺の朝食であろうサンドイッチをつまみながら、邪悪な魔法使いが鼻で笑った。
 おれは息をのむのも忘れて、竜巻のように振り返った。しかし逃げ出そうとしたとたん、後ろから魔法の杖が飛んできて、壁に突き刺さった。
 毛布をかぶっていて本当によかった。あと数センチ横だったら、俺の後頭部は割れていた。
「一人だけ……逃げられると思ってんの……?」
 ぞっとする声が、毛布ごとおれを抱きしめる。
 わかっていたんだ。最初から、逃げられないことぐらい。
 ただ、来年の10月31日は、絶対に部屋から出まいと決めた。



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