Short Novel | ナノ


▼ !!! NIGHTMARE OF HALLOWEEN !!! 

第三章 WHERE DO WE GO ??

 三十分後、監視の目を気にしながら栄養のある朝食をたっぷりと取り、おれはドラキュラになった。
 選択肢があと三つしかなかったんだ。ドラキュラか、メイドか、穴のあいたシーツを頭からかぶるだけの幽霊。それだけ。
「さて、全員そろったところで」
 人一倍ゴキゲンなフランケンシュタインが、胸のハンカチをそわそわと直しながら言った。
 おれたちは風の吹きすさぶ庭に出ていた。剪定の終わったキンモクセイを背に、ロビン、その右隣にぞっとするほど不機嫌なアルベール、左横におれが、円を描くように並べられている。
「こんなところで突っ立って、なにしてるんだよ? 行くならさっさとばあさんの家にマドレーヌでももらいにいこうぜ。もっとも、この時間ならまだ薄力粉なんじゃないか?」
 引きずるほど長いマントを、体に巻きつけておれは言った。寒さのあまり、つい鼻声になる。
 しかしロビンは自慢げに胸を張ると、ちっちっと人差し指を振った。
「わかっちゃいないねぇ、お坊ちゃん。僕はね、本物の魔法使いなんだよ!」
 本物の魔法使いは作り物の魔法使いに睨まれているのも気づかず、得意げにポケットからチョークを取り出した。
 そして突然しゃがみこみ、でこぼこのレンガに円を描き始める。いやな予感はしたけど、アルベールがマントのはしをしっかりと握っていたから、逃げることは諦めた。
 黙って眺めること約一分、本物の魔法陣は完成した。残念ながらおれには魔法の文句が読めないけど、それでいいような気もした。この先何が起こるのか、聞かないほうが心臓のためかもしれない。
 それでも、余計な好奇心はつい口をついた。
「それ……なんだよ?」
「せっかくのハロウィンだもん。もらえるとこはとことん行って、もらうもん全部もらってこようと思って。だから、ちょっと世界を飛び越えようと思うんだ」
 短くなったチョークをヒョイと後ろに放り投げ、ロビンは両手を前に突き出した。
 世界を飛び越えるって? 質問する間もなかった。突然チョークの線が光ったかと思うと、頭を掴まれてぐいっと引っ張られるような感覚に襲われた。
 おれたちは手も使わずバク転して、魔方陣に吸い込まれた。ぐるっと回ったとき、ちょうどよくアルベールの頭にぼうしが乗ったのを、おれは最後に目にしていた。


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