第八章 紅茶伯爵とウィンター・ガーデン
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 その時、手の甲に冷たいものが当たった。それはスプーンの面ではなく、とても、とても懐かしい感覚。
 頭から落ちる砂糖の変わりに、目の前にふわりとした白いかたまりが落ちてきた。
 ダージリンは手を差し出し、手のひらにそれを受ける。すると、白いかたまりは肌に触れるなり、吸い込まれるようにすっと消えてしまった。
「……雪だ」
 手のひらに残った水たまりを見つめ、ダージリンはぽつりと呟いた。
 徐々に、伯爵とニルギリも秋の庭の変化に気付いたのか、楽しそうな笑い声を止め、羽根のような白いものの降る空を見上げる。
 振りまいていた甘い雪につられるように、ウィンター・ガーデンが本来の姿を取り戻したようだ。
 なんとも美しい光景に、ニルギリがうっとりとため息を零す。
 ダージリンは最後にこっそり取っておいたニルギリの花束を取り出し、うす白く染まった冬の庭へ、そっと放った。

 ウィンター・ガーデン、修理完了。





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