まるで別世界




『今度、どっか行かない?』


そう誘われて、今日が初デートの日。
ただ一緒にいたくて、宛もなく外を
二人で歩く。雨だしどこかカフェに
入ろうと探す。


「雨とか最悪だろー。」
「しょーがないよね、あれ?傘は?」
「忘れた、」
「本当は日にちずらそうと思ってたけど。」
「私仕事だもんね、しょうがないしょうがない!」


折り畳み傘をそっとさして、傘を忘れた
梓の方に傾けると私からその傘を奪う


「こういうのは俺が持つ。」
「ありがとうっ」


なんか、ほんと、彼氏彼女になると
こうも変わるんだなと改めて梓の彼女
なんだと実感する。そういえば、これって
相合傘じゃん、さっきより距離が縮まって
肩と肩が触れ合っていると思うと急激に
触れている部分が熱くなった。


「大丈夫?肩濡れてない?」
「ん、ヘーキだよ。梓の方が濡れてるじゃん!」


と主将に風邪ひかれたら大変と
慌てて梓から傘を奪い返そうと
試みるけど、身長差がありすぎ
て全然届かなかった。


「おれは、お前に風邪ひかれたら困るんだよ。」

私の目を見ないでそう言った
梓の横顔は真っ赤に染まっている。


さっきまで聞こえていた雨の音が
一瞬にして無音になった。



まるで別世界


(わたしと梓だけしかいない)

20120914.
相合傘は本当に別世界。
きみとわたしの声しか聞こえない。




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