年下へ小さなハート




バレンタインを一週間後に控えた
今日は少し早いけど私はカバンの
中に小さなハートのチョコレート
を忍ばせていた。実は、あげる子
が野球練習でしばらく会えないと
言うから昨日慌てて作ったので軽
く寝不足だったりする。


「ふはああ」


私のあくびにつられて隣の隆也も
あくびをして、笑うとなんだよと
不機嫌そうに言った。


「隆也、機嫌悪い?」
「あ?」
「あはは」
「へらへらしてんじゃねーよ。」


私がいつどこでへらへらしたよ!
と隆也に詰め寄ると更に不機嫌に
なってさっきからだよ。さっきより
ももっと低い声でその言葉を放って
私に背を向けてしまった。


「お前さ、今日シュンとこ行くんだろ」
「隆也は感がいいね」
「そのへらへら顔見てりゃわかる」


隆也はシュンくんのことになると
変に感がいい。てか、私のへらへら
顔シュンくんに会う前になんとかし
ないと!と締りのある顔を目指そう
と頑張れば頑張るほど隆也お腹をか
かえて笑うもんだから私はさっさと
阿部家に向かおうと教室から出ると


「あ!俺にはねーのかよ!チョコ」
「ないよーっだ!」


私がチョコ持ってること隆也にバレ
たのか・・・どこまで感がいいのよ
本当にびっくりする。


阿部家に着くとママさんとパパさんは
いなくてシュンくんが出迎えてくれた。


「今日は早いんですね!」
「うん。ちょうど良かったシュンくんに渡したい物が」
「え!?なんですか」


私がカバンからチョコを出して差し出す
とシュンくんは目をキラキラさせて嬉し
そうに笑った。


「少し早いけどバレンタインチョコだよ」
「へへ。嬉しいですっ!」


ありがとうございます!と深く
頭を下げて大切そうに私の作った
チョコを抱きしめているのを見て
私も嬉しくて笑顔がこぼれた。


「ホワイトデー期待してるね」
「はい!俺の愛をたっぷりあげますッ!」


悪戯っぽく言ったその顔がなんだか
ちょっと大人っぽく見えてどきっと
したことは内緒。


年下へ小さなハート


(俺には義理チョコの)
(ひとつもねーのかよ。)

20120208.




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