伊織くんはガタガタと体を震わせ、たき火にあたっていた。しかし、全身がずぶ濡れになってるため、あまり意味がないだろう。このままだと、どんどんと体温が奪われていってしまう。
「伊織……」
アルマジモンが心配そうに伊織くんを見つめる。
「風邪薬もある。飲んだ方がいい」
「はい、すみません……」
丈さんさんは伊織くんに薬と水を渡した。症状が出る前に、少しでも対策をすることは必要である。さすが丈さん、本当に準備がいい人だ。
「先輩ほーんと、準備いい!」
私と同じことを思ったらしい京ちゃんが感心したように声をあげた。
「どうしよう……これじゃ伊織くん、移動は無理だね……」
「僕たちだけで行こう」
『うん!』
私たちはタケルくんの言葉に頷いた。伊織くんはここで安静にしてもらわないと。
「よし!」
「僕は残って、伊織くんをみているよ」
「お願いします」
私たちは立ち上がり、伊織くんを丈さんに任せて洞窟から出ようとした。しかし――。
「僕も行きます!」
「えっ!?」
その声に思わず振り返ると、伊織くんが悲痛そうな表情でこちらを見つめていた。
「稽古を切り上げてまで来たんです、おじい様に会わせる顔がありません!」
「そんなの無理よ……」
「ここはみんなに任せた方がいい」
ヒカリちゃんが困ったように眉を潜ませると、丈さんも続けてそう言った。
「そうだぎゃ、伊織の体の方が大事だぎゃ!」
「アルマジモン……」
伊織くんはアルマジモンをじっと見つめると、少し表情を緩ませて顔を上げた。
「……わかりました。ここで待ってます!」
「任しとけ、塔は俺たちがきっちりぶっ壊す!」
大輔くんは自分の胸を叩き、伊織くんを安心させるようにそう言い放った。