到着した先は一面雪景色だった。吹雪も吹いており、肌に冷たさが突き刺さる。デジタルワールドは色々な気候があるなあ……。
「さぶっ! 何だよここ……」
大輔くんも寒そうに自分の体をさすった。
「ヒカリちゃん、大丈夫?」
「うん!」
大輔くんがヒカリちゃんに声をかけたが、ヒカリちゃんは思いのほか元気そうだ。しかし服装は肩も出してるしショートパンツだし、防寒は足りていないような気がする。
「ヒカリちゃんは私が暖めるから平気!」
「ふふ、湊海お姉ちゃんったら」
「では私は湊海様の足元を……」
私はヒカリちゃんの腕に抱きついて暖めた。こういう時は人肌が1番である。そんな私の足元をラブラモンが暖めてくれた。さすが忠犬ラブ公である。
「えーいいな! 俺も!」
「大輔くんは体温高そうだし格好も暖かそうだしへーきへーき」
「そんなあ……」
大輔くんは身を乗り出して私たちに寄ってきたが、私の言葉に肩を落とした。その様子を見てみんなも思わず笑う。しかしそんな中、タケルくんはむっとした表情で大輔くんを横目で見ていた。
「どっちにいいなって言ってんだか……」
「あの……先ほどは挨拶が途中になってしまって、わたくし、火田……」
「お前、こんな状況で挨拶なんかすんな!」
伊織くんの挨拶を大輔くんが呆れたように遮った。
「みんな、良かったらこれ使って」
すると丈さんが袋からカイロを取り出し、伊織くんの手の上に置いた。そのまま丈さんは順番にカイロを渡し、最後のヒカリちゃんまで行き渡った。
「はい」
「ありがとう!」
「さすが丈さん、準備いいですね!」
「やっぱり頼れる先輩ですね!」
「よく言うよな!」
タケルくんに続けて私がそう言うと、丈さんは苦笑いでこちらを向いた。しかし思うところがあるようで、すぐに辺りを見渡し、小さく呟いた。
「一体ゴマモンはどこに……」
その丈さんの言葉に、私とタケルくんは神妙な表情で顔を見合わせた。SOSがあった以上、ゴマモンのことはとても心配だ。一体どこに……?
「それにしてもさぶい……あっ!」
京ちゃんが寒さのあまり、体を震わせカイロを擦り付けていると、うっかり落としてしまった。下から雪が溶けるような音がしたので、慌てて京ちゃんはカイロを取った。
「ああ、しまった!」
京ちゃんはカイロを取って地面を見ると、目を見開いた。
「丈さん!」
「ゴマモン!」
その丈さんの声に、私たちは急いで駆け寄り、地面の雪を掘った。
「ゴマモン! ゴマモン!」
救出したゴマモンは全身傷だらけで、見ているだけで痛々しかった。丈さんが必死に呼びかけると、ゴマモンはゆっくりと体を起こした。
「丈……」
「しっかりしろ!」
「来てくれたんだ……」
「当たり前だろ! 会えなくてもずっと心配してたよ……」
「テントモンから、テレビで丈たちに連絡できるって聞いたから……」
「うん、ちゃんと信号キャッチしたよ……」
ゴマモンはボロボロになりながらも、何とか連絡をとることが出来たらしい。何とか無事で、本当に良かった……。
「俺がSOS出しても、伊織はきっと来てくれんだぎゃ」
ゴマモンと丈さんを見てほっとしていると、アルマジモンが顔を背け、いじけたような発言をしていた。
「何拗ねてるのよ、アルマジモン」
テイルモンが苦笑いしながらアルマジモンに歩み寄った。伊織くんなら来てくれるって分かってるくせにねー。
「どうしたんだよ、こんなに傷だらけで……!」
丈さんが涙ぐみながらそう尋ねると、ゴマモンは声を振り絞ってこう答えた。
「あいつが……デジモンカイザーの奴が!」