電波塔

「みんなー!」

 その聞き慣れた声に、私たちは後ろを振り返る。そこには京ちゃんはもちろん、太一さんや光子郎さん、ゴツモンたちもいて、こちらに向かって走っていた。


『ガルルモン!』

「何で進化出来たの?」

「さあ、何でだろう……」

  太一さんたちが嬉しそうにガルルモンに声を掛ける。アグモンの質問に、ガルルモンは首を傾げた。


「進化出来たのは、あの塔にヒビが入ったときだよね?」

「そうですね、あの瞬間ヤマトさんのデジヴァイスが光って……」

 パタモンとラブラモンがそう状況を説明した。


「ヒビ……? もしかしたら、あの塔を破壊すれば……!」

 京ちゃんはダークタワーを見上げると、そう呟いた。


「分かった! そういうことだったら俺の方が得意だぎゃ!」

「うん! デジメンタルアップ!」

「アルマジモン、アーマー進化! 鋼の英知、ディグモン!」

 ディグモンは進化して早々、ダークタワーへ向かっていく。


「ビッグクラック!」

 そのまままディグモンは、自身のドリルでダークタワーを破壊した。


「あれ? 俺、今まで何してたんだろう?」

 ダークタワーが地面に倒れたその瞬間、レッドベジーモンやベジーモンたちは我に返り、自らイービルリングをとっぱらった。


「ああ! イービルリングの効力が消えています!」

「なるほど、そういう訳か!」

 すると、その様子を見ていた京ちゃんが納得したようにそう言った。


「何が、そういう訳なんですか?」

「この塔は、ただの飾りじゃないってこと。デジモンカイザーのパワーをキャッチして、この辺り一面に広める電波塔のような役割を果たしているんだわ」

「ダークタワーにヒビが入った瞬間、ガルルモンに進化出来たのも、電波塔としての力が弱まったのと同時に、進化の制御も弱くなったからってことなんだね」

「そういうこと!」

 私の言葉に、京ちゃんは大きく頷いた。なるほど……。ダークタワーさえ無ければ、ラブラモンたちは普通に進化できたのか――。


「……そうですよね、泉先輩?」

「はい、その推理で正しいと思います」

 光子郎さんはにこやかに肯定した。さすが京ちゃん。京ちゃんは賢いなぁ。


「これで、選ばれし子どもたちの目的も、はっきりしたな!」

「ああ! デジモンカイザーが支配するエリアに建てられた塔を、片っ端からぶっ壊していくことだ!」

 太一さんとヤマトさんは顔を見合わせると、口元を緩めた。


「頑張るよ、お兄ちゃん!」

「俺だって!」

「私も!」

 大輔くんと私はぐっと拳を握って意気込んだ。あの悪趣味な塔は、倒すに限る!


「そう! 塔を破壊して進化出来れば!」

「こっちのもんよ!」

 アグモンとテイルモンもにこやかにそう言った。


「よしアグモン! ゴツモンたちのエリアに行くぞ!」

「あ、私たちも一緒に!」

 太一さんはゴツモンたちを引き連れ、走り去っていった。アグモンやヒカリちゃんたちも後に続いていく。


「ここは、俺たちが責任を持って守る!」

『お願いします!』

 ヤマトさんがガルルモンに乗りながらそう宣言すると、ガジモンたちは頭を下げた。





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