敵地に潜入

 ヤマトさんたち提案の作戦で、デジモンたちに偽の黒いリングを付け、ガブモンと私たちを縄に縛り、捕まえたという体で牢屋に侵入する事にした。


「湊海様を縄で縛るなど……そんなご無礼出来るわけが……!」

 ラブラモンは縄を持ちながら、ブルブルと震えていた。武者震いか何かかな?


「ラブラモン落ち着いて、ただの作戦だから大丈夫だよ」

「……分かりました。本当に、申し訳ありません……!」

 私がそう声を掛けると、ラブラモンは地面につきそうな勢いで頭を下げた。何だかこっちが申し訳なくなってきたよ。


「ほら、ラブラモン! シャキッとしなさい!」

「は、はい!」

 テイルモンの掛け声に、ラブラモンは背筋を伸ばした。とりあえず、この作戦を成功させないと……!

 そして私たちは、牢屋の前までやって来た。ベジーモンが何体か見張りで居座っている。


「止まれー! お前ら何者だ!?」

「脱走したデジモンと、その仲間を捕まえてきたわ」

 テイルモンはベジーモンたちに、黒いリングを見せつけた。


「牢獄にぶち込んでやる!」

「ほれー! ちゃっちゃっと行くだがやー!」

 うんちやベジーモンの笑い声が飛び交う中、私たちは牢屋へ潜入した。全く、笑ってられるのも今のうちだぞ!


「偽のリングだとは気づかれなかったね」

 ベジーモンたちがいなくなった所で、パタモンがこちらを振り返りながらそう言った。


「だからと言って、油断は禁物よ。私たちこれから、敵の真っ只中に行こうとしてるんだからね」

 テイルモンの言葉に、私たちはダークタワーを見上げた。何とか無事に切り抜けられればいいけど――。


「ほら、グズグズするな!」

 その後私たちは、乱暴に牢屋に投げ込まれた。すみません、もう少し丁寧にお願いします。


「お前たちは全員明日百叩きの刑だー! うええ、へっへっへー! みんな、ご苦労だったな……」

 ベジーモンが後ろを向き直ると、丁度テイルモンたちは偽の黒いリングを外していた。


「ええ!?」

「あんたたちもご苦労様! ネコパンチ!」

 テイルモンの鋭いパンチがベジーモンを直撃し、鉄格子 にぶち当たる。


「湊海様の敵ぃ!」

「ぎゃあ!」

 一方ラブラモンたちも、他のベジーモンをボコボコにしていた。ラブラモンが相手にしたベジーモンだけ一層酷い目に遭っていたのは気のせいだろう。


「ら、ラブラモン、ありがとう!」

「いえ、当然の事をしたまでです!」

「とにかく脱出するぞ!」

 私たちは捕まっていたガジモンたちも連れて、出口へ進んでいった。


「ああ、ストップ!」

 すると先頭にいたパタモンがこちらを振り返り、私たちを止める。下を覗き込むと、ベジーモンが扉付近にたむろしていた。


「いつの間にか、見張りがうじゃうじゃいるよ!」

「俺たちの出番のようだな」

「待てよ!」

 ブイモンの言葉に大輔くんがデジヴァイスを取り出すと、ヤマトさんは大輔くんの肩を掴んだ。


「せっかく救い出したデジモンたちまで、巻き添えにする気か!」

 そのヤマトさんの言葉に、大輔くんは悔しそうに下を向いた。


「上に行こう。あの黒い塔がある丘に行けば……」

「それに賛成」

 ガブモンたちはどんどんと階段を登っていく。私たちもその後を追ったが、どうも大輔くんが後に続いていない。私は一旦大輔くんの元へ戻り、彼の背中を押した。


「ほらほら、行くよ大輔くん!」

「あ、ああ……」

 大輔くんは肩を落とし、トボトボと前へ進んだ。そんな大輔くんを心配そうにブイモンが見上げる。私はぽんと、大輔くんの頭を撫でた。


「……大丈夫。私はちゃんと分かってるよ。みんなにもきっと、大輔くんの気持ちは伝わってる」

「……そうかな」

「そうだよ!」

 私が笑いかけると、大輔くんは小さく頷いた。――大輔くんは、大輔くんのままでいるのが1番だよ。







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