パソコン室の扉を開けると、ラブラモンが待ち構えていた。
「ラブラモン、お待たせ!」
「湊海様!」
私の姿を見るなり、ラブラモンは嬉しそうにこちらに駆け寄った。そのまま私はしゃがみ込み、ラブラモンの目線に合わせた。
「……ごめんね。私、ラブラモンが進化出来ない事ばかり気にしてた。1番辛いのはラブラモンなのに……本当にごめん」
「いいえ」
私がそう謝ると、ラブラモンは首を横に振った。
「前にも言ったでしょう? 例え進化出来なくても、どんな姿でも、私は貴女を守り続けます。ずっと側に居続けます」
「ラブラモン……」
ラブラモンはふっと笑うと、眉を下げた。
「……進化出来ない事は、もちろん悔しいです。でもそれで、湊海様が悩む必要なんて無いんですよ」
「……うん」
私はこくりと頷いた。
「……ふふ、飛鳥さんはすごいですね。湊海様の事はお見通しで、的確なアドバイスまでしてくださったのですから」
「み、見てたの……!?」
私がそう声をあげると、ラブラモンは申し訳なさそうに頭をかいた。
「すみません、こっそりと。飛鳥さんは途中で気づいてたみたいですが」
「えっ?」
「私にウィンクを飛ばしていましたよ。粋なお方ですね」
「さ、さすがお台場小一の爽やかボーイ……」
私は思わずそう呟いた。何もかもが爽やかで、拍手を送りたくなる。本当すごいな、飛鳥くんって。
「……気を悪くされましたか?」
「……ううん、そんな事ない。ラブラモンは心配してくれてたんだもんね。ありがとう」
そうラブラモンに笑いかけると、安心したように息をついた。……心配かけてごめんね。
「ラブラモン! 私たちにしか出来ない事、しっかりとやっていこうね!」
「はい!」
私たちは大きく頷き合った。――ラブラモンとなら、私は何でも頑張れる。今までだってそうだった。もちろんこれからも……!
「……よし! じゃあ早速、大輔くんたちの所へ行こうか!」
「そうですね。皆さんきっと待ってますよ」
「うん!」
私はラブラモンにそう返事をした。大輔くんたち、今頃何をしているかな。危ない目に遭ってないといいんだけど。
「えーっと、ゲートは……」
私はパソコンを操作し、ゲートの画面を出した。しかし――。
「……まずい、閉まってる」
「ええ!?」
私のその言葉に、ラブラモンが大声を出した。
「先程までは開いていたのですが……」
「やっぱり、大輔くんたちと一緒じゃないとダメなのかな……?」
私は自分のデジヴァイスを見つめた。――残念ながら今の私は、デジタルワールドに必要とされていない。ラブラモンもこちらの世界にいるし、弱ったな……。
「……仕方ない。今日は諦め……」
そう私が立ち上がった瞬間、辺りに電子音が響いた。恐る恐る画面を見ると……やはりゲートが開いていた。
「うそ……」
「湊海様……」
思わず声を漏らすと、ラブラモンが心配そうに私を見つめた。色々と疑問はつきないが――。開いたのなら、やる事は一つだ。
「……行こう、ラブラモン!」
「ええ!」
私はパソコンの画面にデジヴァイスを掲げた。 いざ、デジタルワールドへ。