愛情と知識

 私たちは森の中を進んでいった。


「……あれ?」

 すると電子音が聞こえ、伊織くんと京ちゃんがデジヴァイスを手に取る。


「これ、何ですか? デジヴァイスが反応してる」

 伊織くんのその発言に私たちは自分のデジヴァイスを見た。


「僕たちのデジヴァイスには、何の反応もないけど……」

「あたしたちのも……」

「ええ……」

 ラブラモンたちは不思議そうに私たちを見上げた。デジヴァイスの形が違うからだろうか。そもそも、伊織くんたちのデジヴァイスは何に反応しているんだ――?


「やっぱり、あれのせい?」

「間違えおんまへん」

 ピヨモンとテントモンは顔を見合わせ、そう会話をした。


「あれ?」

「みんな、ついてきて!」

 そのピヨモンの言葉に、私たちは先へ進んだ。



「あれは……」

 そのまま進んでいくと、前方に神殿のような白い建物が見えた。


「まるで、マヤ遺跡のピラミッドのようですね」

「高い建物だね……」

 ともあれ、私たちはその建物の階段を上り、中へ入っていった。内部は少々古びており、まさに遺跡といった感じだ。



「あれを見て、空!」

 ピヨモンが促した方を見ると、たまごのような物体が祀られてあった。――あれは、まさか……!


「あれは、デジメンタル!」

 私たちは急いで階段を上がり、デジメンタルの元へ向かった。


「この、たまごみたいなものに反応してます!」

 デジメンタルは2つあり、銀色に翼が生えたものと、金色に紫の模様が入っているものが飾られていた。あれ? この模様って確か――。


「これ、愛情の紋章だわ!」

「これは、知識の紋章……!」

 空さんと光子郎さんがそう声をあげた。――やっぱり。デジメンタルには、それぞれの紋章が刻まれているんだ……。
 2人は顔を見合わせると、デジメンタルを持ち上げた。しかし――。


「ダメだわ……」

「重くて持ち上がらない……」

 空さんと光子郎さんはそう嘆いたが、何かを思い出したようにバッと後ろを振り向いた。


「京ちゃん、試してみて!」

「伊織くんも!」

「ええ? あたしが?」

「は、はい!」

 京ちゃんと伊織くんはデジメンタルの前に立つと、軽々とデジメンタルを持ち上げた。私たちは思わず驚きの声をあげる。


「持ち上がった……」

「大輔くんの時と、同じだ……」

「うん……」

 その瞬間、デジメンタルのあった場所から赤と紫の光が溢れ出した。


「とうっ!」

「だぎゃあ!」

 赤の光からは鳥のようなデジモンが、紫の光からはアルマジロのようなデジモンが飛び出した。


「私の名はホークモン。あなたが来るのを待っていました」

「ちょ、ちょっと……」

 京ちゃんは困ったように眉を潜めた。


「ふわああ、よう寝た。俺を起こしてくれたのはおみゃあかー? 俺の名はアルマジモン。感謝するだぎゃ!」

「あ、うう……」

 伊織くんも突然の出来事で、少し戸惑っていた。――私のようにアルマジモンの名古屋弁に戸惑っている可能性もあるだぎゃ。


「さあ、京さん! 私と共に戦いましょう!」

「ちょ、ちょっと待ってよ! あたし、戦うなんて出来ない!」

 京ちゃんはそのホークモンの言葉に、思わず後ずさりをした。


「おや! それは、困った……」

 ホークモンはそう返されるとは思っていなかったようで、言葉を詰まらせた。すると、空さんが微笑みながら京ちゃんの上に手を重ねた。


「空さん……」

「前にも、ミミちゃんって子が同じ事言ってた。戦いなんて嫌だって。誰かが傷つくのなんて見たくないって。……あたしだって嫌。でも、いつか、デジモンと出会えて本当に良かったって、一緒に冒険出来て良かったなって思える日が、きっと来るから。だから頑張って」

 ――闇に飲まれそうな時もあった。すれ違いもあった。それでも、空さんたち仲間がいてくれたから、ラブラモンがいてくれたから……。
この世界に来て後悔した事なんて、一度もない。乗り越えた先には、必ず何かがあるから。私は――私たちは、ラブラモンたちと出会えて良かったと、そう思っている。

 京ちゃんの表情は先程とは打って変わって明るくなった。……空さんの愛情のおかげ、ですね。


「伊織くんはデジタルワールドのこと、どう思ってるの?」

 光子郎さんは優しい口調で伊織くんに尋ねた。


「どうって……まだ分かりません。来たばかりだし……」

「でも、考えているんでしょう?」

「はい。僕なりに色々と仮説は立ててみました。でも、次から次へと新たな疑問が浮かんできて……知りたいことはいっぱいあるのに」

「伊織くんも知りたがる心をいっぱい持ってるんですね。思った通りだ」

 光子郎さんが嬉しそうに笑った。


「知りたがる心?」

「分からない事があったら、何でも聞いてください。僕たちは仲間です。いつでも力になります。一緒に考えましょう!」

「はい!」

 伊織くんは元気よく返事をした。光子郎さんの知識は、必ず伊織くんの武器になるだろう。――あの時の私と同い年の伊織くん。こんなに力強い仲間がいるなら、きっと大丈夫だよ。


 京ちゃんと伊織くんがパートナーの方を向くと、デジメンタルがそれぞれ赤と紫の光を放った。


「さあ、京さん、伊織くん! デジメンタルアーップ! と、叫んでください!」

 私たちは後ろから京ちゃんたちを見守った。――頑張って、2人とも……!


『デジメンタルアップ!』


「ホークモン、アーマー進化! 羽ばたく愛情、ホルスモン!」

「アルマジモン、アーマー進化! 鋼の英知、ディグモン!」

 私たちの前には銀色の兜を被った赤い鳥のようなデジモンと、たくさんのドリルを装備した黄色のデジモンが立っていた。


「さあ、私たちの仲間を助けに行きましょう!」

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