私たちがたどり着いたのは、のどかな草原だった。遠くには山も見える。
「ここがデジタルワールド……!」
伊織くんは感慨深そうにそう呟いた。
「あれ? 服が変わってる……!」
「わあ! なんかカッコいい!」
伊織くんと京ちゃんは自分の格好を見て喜んでいた。ちなみに伊織くんはベージュの中華服のような服で、どこか可愛らしい。京ちゃんは赤のパンツスタイルで、上半身は黄土色のベストに、緑のリュック、オレンジのヘルメットも装着している。動きやすそうでいいなぁ。
「見て見て、俺のカッコ!」
「まあまあってとこね。あたしの方がカッコいいわ」
「俺の方がカッコいいに決まってるよ! 湊海ちゃんのお墨付きだぜ?」
「僕のもなかなかのものです」
そんな3人の様子を私たちは後ろから見守っていた。
「何かすっかり変わってるわね、今度の選ばれし子どもたちは。時代なのかしら」
「そんな、お年寄りみたいに言わないで下さい」
そんな空さんの言葉に、ヒカリちゃんが口に手を当て笑った。ちょっと失礼なんじゃないかと一瞬思ったが、ヒカリちゃんに悪気はないし、空さんも気にしてないようだし――いっか!
私たちはデジモンたちを探すため、前へ進んだ。
「ピヨモーン!」
「テントモーン!」
空さんと光子郎さんがパートナーの名前を呼ぶ。
「ブイモーン! どこにいるんだー! ブイモーン!」
「大輔ー!」
その声に大輔くんはぱあっと表情を明るくさせた。
「ブイモン!」
「おっす!」
大輔くんとブイモンは握手を交わした。
「パタモンたちの仲間、見つけたぜ!」
ブイモンの後ろからは、ラブラモンたちはもちろん、テントモンとピヨモンもいた。
「テントモン!」
「ピヨモン!」
私たちはそれぞれのパートナーの元へ駆け出した。
「ラブラモン!」
「湊海様!」
ラブラモンは私の姿を見るなり、全力でこちらに向かって駆け出した。そして私の前に立つと、嬉しそうに跪く。
「こうして今日も湊海様にお会い出来るとは……有り難き幸せ」
「ふふっ、私も幸せ!」
私はラブラモンの頭を撫でた。色々と問題は尽きないが、こうしてラブラモンと会えるだけで私の心は満たされる。――例え何が待ち受けていようとも、ラブラモンとなら、絶対に……!
そんな時、私たちの真上を雲が通った。辺り一体が影になるくらいの大きな雲だ。その雲が通り過ぎると、何かの影が移った。
「なに!?」
バッと空を見上げると、そこにはスナイモンがいた。当然と言うように黒いリングが嵌められており、思わず身構える。するとスナイモンは、空さんとピヨモンに狙いを定めた。
「空さん!」
「空さん、伏せて!」
とっさにタケルくんが空さんを庇い、地面に伏せた。私たちもしゃがみ込み、自分の身を守る。
「いやあああ!」
京ちゃんが目を瞑って叫び声をあげた。
「マジカルファイヤー!」
「エアーショット!」
「プチサンダー!」
スナイモンはピヨモンたちの攻撃を軽々と避けていく。いくら3対1でも、さすがに成熟期には敵わない――か!?
「ネコパンチ!」
テイルモンのパンチは命中したものの、スナイモンはびくともしない。そのままテイルモンは弾き飛ばされ、地面に倒れた。
「やはり、ホーリーリングが無いと、パワーが出ない……」
「ちっくしょう! アーマー進化してやっつけてやる! 大輔、デジメンタル!」
「よーし!」
そう大輔くんがデジヴァイスを構えた時だった。突然大輔くんの近くに穴が空き、その中に落ちてしまう。
「うわあああ!」
「大輔!」
ブイモンは穴を覗き込んでいたが、どこからか飛んできた骨のブーメランにぶつかり、大輔くんと同じように落ちてしまった。
「うわああ!」
「ブイモン、大輔くん!」
私が駆け寄った時には、穴の中に2人の姿はなかった。――くそ、やられた……!
「う、うそ……地面の中に吸い込まれちゃった……」
「た、助けなきゃ……」
京ちゃんは膝を付き、震えながらそう呟いた。伊織くんも呆然と立ち尽くしている。
私たちは2人の元へ駆け寄った。
「ここは、ひとまず逃げましょう!」
「でも、大輔さんが……」
光子郎さんがそう声を掛けたが、伊織くんは戸惑っていた。
「マジカルファイヤー!」
「エアーショット!」
「プチサンダー!」
上空ではピヨモンたちがスナイモンの気をひいている。
「ここであたしたちまで捕まったら、大輔たちを助ける事だって出来ないのよ!?」
空さんは京ちゃんを叱咤した。――前からはスナイモン、後ろからはモジャモン。私はぐっと拳を握った。ボヤボヤしてる時間はない。
「さあ、早く!」
「京ちゃん!」
空さんと私は京ちゃんの腕を引いた。
「こんなの……こんなの、いやあああ!」
京ちゃんの絶叫が辺りに響いた。