「もう本当楽しみ!」
「ええー? 楽しいだけじゃないんだよ、あの世界は」
その翌日、私は興奮気味な京ちゃんの話を聞いていた。
「そんな固いこと言わないの! 大輔が大丈夫だったんだからあたしたちも大丈夫よ、きっと」
「うーん……」
私は言葉を濁した。確かに無事には帰ってきたものの、何も無かった訳では無かった。もちろん今日も、カイザーとやらがいる限り、決して安全では無いだろう。
「大輔くんは意外とやる男だぞ!」
その声に私たちは後ろを振り返った。
『飛鳥くん!』
「よっ!」
飛鳥くんはそう挨拶をすると、隣の席に腰掛けた。
「なに? 何の話?」
「え、えっと……」
京ちゃんが困ったようにちらりと私を見る。私はにこりと笑い、飛鳥くんにこう伝えた。
「デジタルワールドの話だよ」
「湊海ちゃん!?」
平然とそう言う私に、思わず京ちゃんが大声をあげた。
「大丈夫! 飛鳥くんは3年前からデジモンの事、知ってるから」
「そうだったんだ!」
「デジタルワールド……?」
飛鳥くんは私の言葉に首を傾げた。
「なんで京とその話を?」
「ふふふ、じゃーん!」
京ちゃんはデジヴァイスを飛鳥くんに見せつけ、机の上に置いた。その瞬間、飛鳥くんの目が大きく見開く。
「これは……!?」
「新しいデジヴァイスだよ。私のとは、形が違うけど」
私は自分のデジヴァイスを京ちゃんのデジヴァイスの隣に並べた。こうして見ると、全く形が違う。恐らく基本的な機能は変わってないだろうが――決定的な違いもあるのだろう。ラブラモンたちが進化出来なくても、ブイモンは進化出来たように。
「じゃあ京も、選ばれし子ども……なんだな」
「うん、多分ね」
私は飛鳥くんの問いに頷いた。
「何? その選ばれし子どもって」
「デジヴァイスを持っていて、パートナーデジモンがいる子どもの事だよ」
「ふうん……」
京ちゃんはそう返事をして、デジヴァイスを眺めた。もし大輔くんと同じなら、あちらの世界に京ちゃんたちのデジメンタルもあるだろう。きっとその時、パートナーデジモンにも会える。……進化も、出来ると思う。京ちゃんたちなら。
「あ、そうだ。飛鳥くんも一緒にデジタルワールド行く? 絶対楽しいわよ!」
「いやいや、デジヴァイスを持ってないと行けないよ」
「そういうもんなの?」
「そういうもんです!」
私は京ちゃんに力説をした。誰でもホイホイ行けるような所が、あんなに危険でたまるかい!
飛鳥くんは私と京ちゃんのやり取りにくすりと笑うと、真剣な顔でこう言った。
「……京、湊海。気をつけてな」
「オッケー!」
「ありがとう、飛鳥くん」
私たちは飛鳥くんにそう返した。