その日の夜。私たち――3年前に一緒に冒険をした選ばれし子どもたちは、近くの公園に集合した。
「あ、お兄ちゃん!」
隣に座っていたタケルくんが立ち上がり、声をあげる。
「ヤマト……!」
「悪い、遅くなった」
ヤマトさんは私たちにそう謝った。
「みんなが揃うの、久しぶりね」
空さんは遊具から飛び降り、嬉しそうに言った。
「ふふ、そうですね!」
「……それで、一体何があったんだ?」
「実は……」
そのヤマトさんの問いに、太一さんは今日の事を話し始めた。
太一さんはアグモンからSOSがきたらしく、それでデジタルワールドに行ったらしい。アグモンたちに誘導され、太一さんが勇気のデジメンタルに触れた途端、大輔くんたちのデジヴァイスが飛び出してきたようだ。
「じゃあお兄ちゃんが、大輔くんたちのデジヴァイスを?」
「ああ、俺も驚いたんだけど……」
追い詰められた太一さんは、私たちに一斉メールを送った。それを京ちゃんに見られてしまった訳だ。結果彼女も選ばれし子どものようだったから、問題は無かったのだけど。緊急事態だったしね。
後の流れは私たちも知っている。太一さんの話を聞きつつ、私たち現場に立ち会った人も、思った事を述べていった。
「アーマー進化だって!?」
説明の途中で、ヤマトさんが大声をあげた。相当驚いたらしい。
「ああ、見た事もない進化だった。アグモンたちは進化できなかったのに、大輔のデジモンが進化したんだ!」
「サッカークラブの大輔がデジタルワールドに?」
空さんが目を見開いた。
「同じマンションの京さんと伊織くんも、新しいデジヴァイスを持ってるんだ」
タケルくんがそう補足で説明をした。
「じゃあ、その3人が新しい選ばれし子どもなのかい?」
「だと思います」
丈さんの質問に、光子郎さんはそう答えた。太一さんも続けて頷く。
「でも、そのデジモンカイザーっていうのが無差別にデジモン狩りをしていたとしたら……ピヨモンたちは大丈夫なの?」
空さんが不安そうに眉を潜ませた。
「ミミさんもアメリカからメール送ってきたよ。パルモンが心配だって」
「うん……」
私はヒカリちゃんに同意し、小さく頷いた。『どんな小さいことでもいいから、分かったらすぐ知らせて欲しい』と、その文面には書かれていた。ミミさんは私たちからも離れている分、余計に不安なんだろう。
「……俺たちも行かないか? デジタルワールドに!」
「でも……!」
ヤマトさんの力強い言葉に、光子郎さんは目を伏せた。
「……部屋を出る時はもう、ゲートは閉まってました」
「そうか……。そうだよな……」
ヤマトさんは小さく呟いて、下を向いた。少しの間沈黙が続く。――私たちは、自由にデジタルワールドを行き来する事が出来ない。ゲートが開いてくれれば、それが1番なんだが……。
「……とにかく、明日もう一度、パソコン部のパソコンを調べてみようと思うんです」
「うん!」
光子郎さんの言葉に、太一さんが頷いた。
「俺も行くよ!」
「あたしも行く!」
「私も!」
「うん!」
「うん!」
私たちも続けて大きく頷いた。明日もゲートが開くかは分からない。――それでも、ラブラモンたちのために、デジタルワールドのために……私たちは、出来る事をやりたいと思っている。
「……ごめん。僕は明日全国模試があって」
「俺も今日バンドの練習、サボっちまったからな……」
丈さんとヤマトさんが申し訳なさそうにそう言った。
「分かった!」
太一さんがスタッとベンチから飛び降り、ヤマトさんの前に立つ。
「俺たちに任せとけよ!」
「何かあったら、すぐに知らせてくれよ」
「ああ!」