辺りはすっかり夕暮れ時になっていた。ブイモンと大輔くんが友好の握手を交わす。
「改めてよろしくな、大輔!」
「ああ!」
「すごかったぜ! アーマー進化!」
太一さんが大輔くんの横に立ち、嬉しそうに笑った。
「僕たちは進化出来ないけど……君ならデジモンカイザーを倒す力になれるね!」
「ああ、任せて!」
アグモンの言葉に、ブイモンは力強く返事をした。
「大輔。お前はきっと、新しい選ばれし子どもなんだ。これからは、お前がデジタルワールドを守ってくれ」
太一さんはそう言うと、自分のゴーグルを大輔くんに差し出した。
「これ、俺のゴーグル。使えよ」
大輔くんはそれを両手で受け取り、自分の頭に装着した。
「似合うじゃない!」
「かっこいいよ、大輔くん!」
「えっ、そう?」
ヒカリちゃんが褒めたからか、大輔くんは満面の笑みを浮かべた。その様子を見ていたタケルくんがくすりと笑う。
「そろそろ安心だね」
「えっ? どうして?」
「デジモンカイザーは、夜は現れないの」
「とりあえず今日は、もう大丈夫ですよ」
パタモンに続いて、テイルモンとラブラモンがそう答えた。夜は現れない――睡眠時間はきちんと取っているということだろうか。健康な子どもだこと。
「ねえ太一ぃ。そろそろ帰らなくて大丈夫なのー?」
「そうだなぁ、ゲート閉まってなきゃ良いけどな。お前たち、どこから来たんだ?」
アグモンにそう返しつつ、太一さんはこちらを振り向いた。
「森の方から来たんですよ」
「じゃあ、とりあえずそこに向かうか!」
という訳で、私たちは先程の森を歩いていった。進んでいくと、何やら声が聞こえてきた。
『もうっ、伊織が遅いから!』
『しょうがないじゃないですか……、おはぎ取りに行ってたんですから』
『美味しいですね、このおはぎ』
テレビの画面では、京ちゃんと伊織くん、そして光子郎さんが3人で仲良くおはぎを食べていた。随分楽しそうである。
『ああ、美味しかった! さ、行きましょ!』
『えっ、どこへ……?』
『決まってるでしょ、デジタルワールド! ……うわああ!』
こちらを見た京ちゃんが、大声をあげた。
「おーい! 俺だよ、大輔だよー!」
「私もおはぎ食べたい!」
大輔くんと私はテレビを覗き込んでそう言った瞬間、テレビが光を放ち、私たちは吸い込まれていった。
「うわああっ!」
現実世界に戻った私たちは着地に失敗し、もみくちゃになった。辛うじて大輔くんとタケルくんが下にいることしか分からない。
――こうして、私たちの新たな冒険の幕が開かれた。