勇気を受け継ぐ者


 今日は6年生の新学期だ。ついに最高学年となってしまった私。特に今までと生活が変わる訳ではないが、気合を入れて頑張ろう。
 私はヒカリちゃんと一緒に登校し、昇降口前に貼られているクラス分けの掲示板を見た。


「あ、また大輔くんと同じクラスだ」

 ヒカリちゃんはそう小さく呟いた。大輔くんは太一さんのサッカークラブの後輩でヒカリちゃんの同級生だ。大輔くんは太一さんはもちろん、ヒカリちゃんも大好きなようで、猛烈アタックをしている。それが実っているかは――深くは追求しない。
ちなみにその関係で私とも仲が良い。とっても可愛い後輩だ。


「良かったね、ヒカリちゃん!」

「……良いと思う?」

 ヒカリちゃんがずいっと私に近寄りながらそう問い詰めた。


「わ、私なら嬉しいよ」

「そりゃ湊海お姉ちゃんはね。大輔くんはお友達だし、嫌いって訳じゃないけど……分かるでしょ?」

 ヒカリちゃんは「はあ……」とため息をついていた。どうやらヒカリちゃん、大輔くんの押しに押しまくる体制が嫌ならしく、よく大輔くんをスルーしている姿を見かける。
大輔くんは良くも悪くも真っ直ぐ過ぎるのだ。私は好きだけどね、大輔くんのそういう所!
 ただ、人にはそれぞれ感性が違う。ヒカリちゃんが「ちょっと……ね?」と思うのも仕方ないさ。ドンマイ、大輔くん。


「まあまあ、大輔くんも悪気はないんだから。元気に教室いっといで」

「はーい。いってきまーす」


 私はヒカリちゃんに手を振り、その場で別れた。さーて、私のクラスは――。



「同じクラスだったわよ!」

「今年もよろしくな!」

「え?」

 その声に私は後ろを振り返った。


「京ちゃん、飛鳥くん!」

 2人のはぐっと親指を立て、決め顔をしていた。朝から元気である。


「おはよう湊海ちゃん!」

「うん、おはよう! 同じクラスって本当に? 今年は絶対別れると思ってたのに」

「俺もそう思ってたけど同じだったよ。やったな!」

 飛鳥くんが嬉しそうに頬を緩めた。


「ふふ、そうだね!」

「さあ! 早く教室へゴーゴー!」

「わっ!」

 私たちは京ちゃんに背中を押され、そのまま小走りで教室に向かった。


 ――今年もまた1年、楽しい学校生活を送れそうだ。

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