今日は6年生の卒業式だ。玄関の前で卒業生はお互いの別れを惜しんでいる。私たちは光子郎さんに最後の挨拶をしていた。
「では、湊海さん。京くん。飛鳥くん。パソコン部をお願いします」
光子郎さんがそう頭を下げたので、私たちは大きく頷いた。
「もっちろんですよ! 新部長の私に任せてください!」
「私も引き続き、副部長として頑張ります!」
「俺も一部員として、しっかりとやっていきます!」
パソコン部の部長には、京ちゃんが就任した。光子郎さんから直々の指名だ。もちろん私も。その際光子郎さんに、影からみんなを支えて欲しいとお願いされた。その役目、必ず全うしてみせます!
「おい、泉ー! 記念撮影するぞー!」
「あ、はーい!」
光子郎さんはクラスメイトに呼ばれ、大きく手を振った。
「じゃあ、また。今度顔出しにきますから」
「はい! 光子郎さん、今までありがとうございました!」
『ありがとうございました!』
私たちは深くお辞儀をした。光子郎さんはこの1年間、部長として頑張ってくれていた。時に優しく、時に厳しく……。私たちは光子郎さんのおかげで、楽しく部活動をする事が出来たし、パソコンの技術もグンと上がった。――本当にありがとうございます。光子郎さん。
「……こちらこそ、ありがとう」
光子郎さんはにこりと笑うと、クラスメイトたちの元へ向かった。――光子郎さんが敬語を使わないなんて、よっぽど嬉しかったのかな。……それなら、良かった。私は小さく微笑んだ。
「はあ、ついに泉先輩も卒業かぁ……」
光子郎さんの背中を見送りながら、飛鳥くんはため息をついた。
「やっぱり、ちょっと寂しいわね……。そうだ! 今度泉先輩のお家に遊びに行きましょうよ!」
「ふふ、光子郎さんもきっと喜ぶよ」
こんなに慕ってくれる後輩が2人――いや、3人もいるなら……きっと。
「だな……ああっ! 忘れてた!」
「どうしたの?」
いきなり大声を出した飛鳥くんに、私はそう声を掛けた。
「今日は早く帰ないといけないんだよ! 妹がお腹空かせてる!」
「じゃあ、うちで昼ご飯買ってく?」
「そうする! じゃあな、湊海!」
飛鳥くんはそう言うや否や、校門に向かって駆け出した。
「あ、待ってよー! 湊海ちゃん、またね!」
「また明日ー!」
京ちゃんはそんな飛鳥くんを追いかけていく。ちなみにあの2人、実は同じマンションで部屋も近いんだとか。少し羨ましい。
――その時、聞き慣れた電子音が辺りに鳴り響いた。
「……あれ?」
私はポケットに入れていたデジヴァイスを取り出した。私のデジヴァイスが、鳴っている……?
「何で……」
この赤い点――。近くにデジヴァイス……選ばれし子どもがいるとでもいうのか? でも、そんな事って……。
「湊海お姉ちゃん!」
「わっ!」
いきなり肩を叩かれ、思わず体を揺らす。後ろを振り返ると、そこにはヒカリちゃんがいた。
「何だ、ヒカリちゃんか……」
「どうしたの?」
「いや、デジヴァイスが急に鳴り始めてさ……ヒカリちゃんのデジヴァイスに反応してたんだね」
「ふうん……珍しいね」
ヒカリちゃんは自分のデジヴァイスを取り出し、じっと眺めた。――そう。私たちのデジヴァイスはしばらく鳴っていなかったのだ。今のところ日本には選ばれし子どもがいないようだから、当たり前と言えば当たり前なんだけど……。一体どうしたのだろう。
「……元気かな、テイルモンたち」
「きっと元気だよ」
私たちは空を見上げた。最近はあまりゲートが開かず、ラブラモンたちと会えていない。久しぶりに会いたいな……。ラブラモン、ロップモン――。
新たな冒険が今、始まる。