2002年3月


 今日は6年生の卒業式だ。玄関の前で卒業生はお互いの別れを惜しんでいる。私たちは光子郎さんに最後の挨拶をしていた。


「では、湊海さん。京くん。飛鳥くん。パソコン部をお願いします」

 光子郎さんがそう頭を下げたので、私たちは大きく頷いた。


「もっちろんですよ! 新部長の私に任せてください!」

「私も引き続き、副部長として頑張ります!」

「俺も一部員として、しっかりとやっていきます!」

 パソコン部の部長には、京ちゃんが就任した。光子郎さんから直々の指名だ。もちろん私も。その際光子郎さんに、影からみんなを支えて欲しいとお願いされた。その役目、必ず全うしてみせます!


「おい、泉ー! 記念撮影するぞー!」

「あ、はーい!」

 光子郎さんはクラスメイトに呼ばれ、大きく手を振った。


「じゃあ、また。今度顔出しにきますから」

「はい! 光子郎さん、今までありがとうございました!」

『ありがとうございました!』

 私たちは深くお辞儀をした。光子郎さんはこの1年間、部長として頑張ってくれていた。時に優しく、時に厳しく……。私たちは光子郎さんのおかげで、楽しく部活動をする事が出来たし、パソコンの技術もグンと上がった。――本当にありがとうございます。光子郎さん。


「……こちらこそ、ありがとう」

 光子郎さんはにこりと笑うと、クラスメイトたちの元へ向かった。――光子郎さんが敬語を使わないなんて、よっぽど嬉しかったのかな。……それなら、良かった。私は小さく微笑んだ。


「はあ、ついに泉先輩も卒業かぁ……」

 光子郎さんの背中を見送りながら、飛鳥くんはため息をついた。


「やっぱり、ちょっと寂しいわね……。そうだ! 今度泉先輩のお家に遊びに行きましょうよ!」

「ふふ、光子郎さんもきっと喜ぶよ」

 こんなに慕ってくれる後輩が2人――いや、3人もいるなら……きっと。


「だな……ああっ! 忘れてた!」

「どうしたの?」

 いきなり大声を出した飛鳥くんに、私はそう声を掛けた。


「今日は早く帰ないといけないんだよ! 妹がお腹空かせてる!」

「じゃあ、うちで昼ご飯買ってく?」

「そうする! じゃあな、湊海!」

 飛鳥くんはそう言うや否や、校門に向かって駆け出した。


「あ、待ってよー! 湊海ちゃん、またね!」

「また明日ー!」

 京ちゃんはそんな飛鳥くんを追いかけていく。ちなみにあの2人、実は同じマンションで部屋も近いんだとか。少し羨ましい。

 ――その時、聞き慣れた電子音が辺りに鳴り響いた。



「……あれ?」

 私はポケットに入れていたデジヴァイスを取り出した。私のデジヴァイスが、鳴っている……?


「何で……」

 この赤い点――。近くにデジヴァイス……選ばれし子どもがいるとでもいうのか? でも、そんな事って……。


「湊海お姉ちゃん!」

「わっ!」

 いきなり肩を叩かれ、思わず体を揺らす。後ろを振り返ると、そこにはヒカリちゃんがいた。


「何だ、ヒカリちゃんか……」

「どうしたの?」

「いや、デジヴァイスが急に鳴り始めてさ……ヒカリちゃんのデジヴァイスに反応してたんだね」

「ふうん……珍しいね」

 ヒカリちゃんは自分のデジヴァイスを取り出し、じっと眺めた。――そう。私たちのデジヴァイスはしばらく鳴っていなかったのだ。今のところ日本には選ばれし子どもがいないようだから、当たり前と言えば当たり前なんだけど……。一体どうしたのだろう。


「……元気かな、テイルモンたち」

「きっと元気だよ」

 私たちは空を見上げた。最近はあまりゲートが開かず、ラブラモンたちと会えていない。久しぶりに会いたいな……。ラブラモン、ロップモン――。







 新たな冒険が今、始まる。






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