la mer

サンジ奪還編D

サンジたちの乗る猫車に引かれるように、兵士たちとともにララは車に乗っていた。侍女はララ一人だった。
緑の丘が続いている様子を、兵士たちの隅で、ララはぼんやり見ていた。ルフィたちは、どうしてるだろう。ビッグ・マム側に見つかってないといいけれど。
ふとルフィの声が聞こえたような気がして、ララはハッと後ろを振り返った。兵士たちの頭の向こうに、こちらに凄い勢いでやってくる大木が見えた。上に乗っているのは、ルフィとナミだろうか。驚いていると、ルフィが両手を伸ばし、サンジたちの車のドア部分にがしゃんと捕まった。

「迎えに来たぞサンジ――――!!!」

猫車は止まり、兵士たちが車から出て銃をルフィに向ける。ララも同じように車から降りようとしたとき。
大きな音ともに、ルフィは空中へ投げ出された。地面に倒れたルフィと、立っているサンジを見て、何が起きたのかを悟った。

「……………」

「帰れ、下級海賊共」

サンジの口から、苦しくなるような言葉が放たれる。

「おれの名はヴィンスモークサンジ。『ジェルマ王国』のプリンスだ!!! 隠してたことは悪かったよ…!! 言えばお前らがみじめでね。おれとお前らとの身分の差は一目瞭然。ここにいりゃ金も兵士も召使いも使い放題……!! またあのくだらねェお前の仲間たちの船へ戻るのと…ここで『四皇』ビッグマムの美しい娘を妻に貰い暮らすのと、どっちが幸せかなんて比べるまでもねェよな!! あんな手紙間に受けてんじゃねェよ!! おれは戻らねェ!!!まさかここまでやって来るとは、ご苦労さん……帰れ……名前なんだっけな」

「ふざけんな!! 何言ってんだ!? 納得できるか!!!」

「ハハハ、よし!追い払うの手伝ってやるよ!」

ヨンジの言葉にサンジが叫んだ。

「手ェ出すな!! おれが追い払う……!!!」

立ち尽くすララの目の前で、ルフィとサンジの決闘が始まる。反撃せずやられっぱなしのルフィ、それを止めるナミの声。全てが現実とは思えなかった。

「コンカッセ!!」

サンジがかかと落としをきめ、ルフィはその場に倒れる。満身創痍のルフィの痛みも、サンジの心の痛みも、よくわかった。ララは唇を噛み、泣くのをこらえた。

「ちょっと、サンジ!!」

ナミがサンジへ歩み寄り、思い切りビンタする。

「さよなら。ごめんね、余計な事して……」

サンジは何も言わず後ろを向くと、馬車に向かって歩き始め、中に乗り込んだ。ララも兵士たちと後ろの車に乗り込む。本当はルフィたちのところへ行きたかった。サンジは脅されてるのだと言いたかった。でも今この姿でそんなことをすれば、レイジュが疑われてしまう。
ナーと車を引いていた猫が鳴き、動き始めた。その時だった。

「待てサンジィ――ッ!!!」

ルフィの叫びが聞こえてきた。

「なにが下級海賊だ……!! 言いたくもねェ言葉並べやがって!! ウソつくんじゃねェよ!! こんなもんでおれを追い払えると思ってんのか!!? フザけんな!!! おれのこと蹴るだけ蹴っても!! 痛ェのお前だろ!!!」

「ルフィ!! 何で!? どんな理由であれあんたをこんな目に…」

ナミの言葉を、ルフィはうるせェ!!と一蹴する。そしてまた言葉を続けた。

「旅はまだ途中だぞ!!! おれはここで待ってるからな!!! お前が戻って来ねェなら、おれはここで餓死してやる!!! お前はおれの船のコックだから!! おれはお前の作ったメシしか食わねェ!!! 腹が減っても!!! 槍が降っても!!! ここを動かずお前を待ってる!!! 必ず戻ってこい!! サンジ――お前がいねェと……!! おれは、海賊王になれねェ!!!!」

ルフィの言葉に、堪えていた涙がこぼれた。
兵士たちに背を向け、ララは声を上げずに涙を流した。



20180925
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