34※色んな顔を、忘れないように



それから二人は買い物に行ったり、船でゆっくりしたり、シャボンディ名物を食べに行ったり、高級なホテルに泊まって身体を重ねたりして過ごし、一時も離れず出港の前日の夜を迎えた。
人間屋に行ったり、カジノで遊んだり、暇潰しと言ってローが海賊団(船長は8千万ベリーの賞金首だったらしい)をひとつ壊滅させた以外は恋人らしく過ごせたな、とクーラはローの部屋のベッドの上で、片膝を立てて本を読んでいるローの顔を下から眺めながら振り返っていた。


「……退屈じゃねェのか。」


ローが、下ろした片足の太股辺りに頭を乗せているクーラを、本から目線だけを落として見る。


「全然。ローの顔見てるから。」

「何だそれは。」

「気にしないで。」


ローは怪訝な表情でまた目線を本に向ける。
クーラはローの色んなものを頭に焼き付けておこうと、文字を追うローの目をじっと見つめたり、本を持つ手の甲や指の刺青をなぞったり、ローの頭に手を伸ばして無造作に立った髪を撫でたりしてみる。
腹筋や胸板を服の上から触っていると、それまで特に何の反応も見せなかったローが突然、ばたんと本を閉じベッド脇に置いてクーラの頭を掬い上げたと思えば、顔と顔の距離がゼロになった。


「んっ……」


ぼんやりとローの身体をなぞっていたクーラに不意をつかれて落とされたキス。
ローの舌が差し込まれ、クーラの舌に絡む。


「ふっ……んっ、んんっ……」


無理矢理される訳でもなく、優しさを感じる行為にクーラの目は驚きから恍惚に変わる。


「っ、んっ、ぷは……っ、ロー……っ」

「何だ、嫌か。」

「ううん、嫌じゃ、ない。」

「嫌って言っても止めねェけどな。誘ってきたお前が悪い。」

「別に誘った訳じゃないけど……」


そういえば鍵付いてたけれど、いつ付けたんだろうとふと思っているとローの舌が首筋を伝った。

「ん……っ」

ローがクーラの身体に覆い被さり、進められる前戯にクーラは徐々に身体を熱くした。


ローが指に絡まったクーラの愛液を舐めとる。

「悪くねェな。」

「それ、恥ずかしい……。」

「その顔も良い。挿れるぞ。」

クーラが頷くと中にゆっくりとローのモノが入って来る。

「んんっ……ぁあっ……!」

「流石にもうすんなり挿入るようになったな。もう痛くはないか。」

「うんっ、大丈夫……っ!」

「動くぞ。」

「あぁっ、はぁっ、んっ!」

「イヴの中、すげェ気持ち良いな。」

ローが腰を動かしながらクーラの耳元で囁く。

「やぁっ……そんなことっ……、言わないで……っ!んっあぁっ……!」

ローとの経験を重ねる度に、ローの行為や言葉は愛情を増してきていると、クーラは感じていた。

「はぁっ、はぁっ、イヴ……!好きだ……っ!」

「だいすきっ……!ロー……!あぁっ、ふっ……ぁあっ!」


時折舌を絡め合いながらローの動きは段々激しくなっていく。


「やっ……あぁっ!もう……だめ……っ!」

「はっ、はあっ、イクぞっ!」

「うん……っ!あぁあっ、んっ、ああっ!わたしも……っ!あっ、ああぁっ!」



同時に絶頂を迎えた二人はひとつ、口付けを交わした。


もう、ローとこうやって愛を確かめ合ったり、男の顔を見るのも最後だということが頭をよぎって、悲しさと寂しさで涙が溢れそうになる。
クーラは奥歯を噛み締めて必死で堪えたけれど、一粒だけ、ローに背を向けたクーラの目尻から流れた。





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